医療的ケア児支援へ一歩 釧路市と中標津町、保育園に看護師 4月から受け入れ

経管栄養を受けながら、絵本を読む釧路市立芦野保育園の太田色奏ちゃん。春から園に配置された看護師がそばで見守る

釧路市は本年度、医療的ケアが日常的に必要な子ども「医療的ケア児」に対応する看護師を市立保育園に初めて配置し、チューブで栄養を胃に送る経管栄養が必要な子1人が入園した。医療的ケア児の受け入れ先が少なく、保護者が仕事を続けられないことが課題となっており、昨年9月に「医療的ケア児支援法」が施行された。これを受け、釧根管内でも支援体制の整備が進みつつある。

釧路市立芦野保育園には4月から、医療的ケア児の太田色奏(かなで)ちゃん(1)が元気に登園している。約600グラムの体で産まれた色奏ちゃんは食べる力が弱く、鼻のチューブからミルクを体に送る経管栄養が必要で、1日2回、春から同園で働く看護師2人が交代で対応する。色奏ちゃんは昨冬に別の保育園への入園を希望していたが、経管栄養の対応が難しいと断られ、この春やっと同園に入園できた。仕事復帰した母親の優希さん(28)は「保育園に通い始めて表情が豊かになった」と成長を感じている。

釧路市内の公立保育園4園にはこれまで看護師はいなかった。私立保育園には看護師が常駐する園もあるが、医療的ケア児には看護師が付きっきりになるため、人員的余裕がなく受け入れは簡単ではない。

昨年施行の支援法には、市町村に対し、看護師の配置に補助を出す支援事業の実施などが盛り込まれた。これを受け、釧路市は保育園に看護師を配置したほか、今春から小学校での態勢も強化。以前から看護師を配置する市立中央小で、直接雇用の看護師1人の態勢から、訪問看護事業者への業務委託に切り替え、ニーズに応じて複数人の看護師の対応が可能になった。根室管内では中標津町が4月から、町立保育園に看護師を配置し、2人の医療的ケア児の受け入れを始めた。

医療的ケア児の支援は、看護師の確保が難しいなどの理由で、地域格差があるのが現状だ。今年6月には道が「北海道医療的ケア児等支援センター」を札幌市に開設し、自治体や家族から支援に関する相談を受け付けている。同センターの高波千代子相談員(44)は「訪問看護ステーションや、看護師資格があって離職している人など、地域の資源を活用して、自治体全体で子どもを支える環境が広がってほしい」と話す。

医療的ケア児

たんの吸引や腹部からチューブで胃に栄養を送る「胃ろう」、人口呼吸器装着などが日常的に必要な高校生以下の子ども。症状は一人一人異なり、医療的ケアの対応は親や看護師、研修を受けた保育士などに限られる。受け入れ態勢の整った保育所や学校が少なく、親の負担の重さが課題となっている。2021年9月施行の医療的ケア児支援法では、ケアが必要な子どもの支援を国や自治体の「責務」と位置づけ、都道府県による支援センター設置を盛り込んだ。道によると、医療的ケア児の人数は、釧路管内が53人、根室管内が9人(21年4月時点)。

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