連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第32回

離乳食を嫌がる 手づかみ食べで改善も

Q.質問

8カ月の長男が、離乳食を食べないので困っています。スプーンで食べさせようとすると口を開けず、やっと一口食べても、すぐに顔をそむけたり手で払おうとします。食材の種類、味付けや固さなどいろいろ変えて試しましたが、どうやっても食べません。しかし、おっぱいだけはよく飲みます。かかりつけ医からは、体重などの発育や発達は正常範囲であり、そのうち食べるようになると思うので様子を見ましょうと言われています。

A.回答

母親の赤ちゃんに関する悩みで、離乳食は大きなものがあります。ある調査によれば、母親の離乳食の悩みのうち一番多いのは、作り方やレシピがわからないことで、次いで多いのは子どもがあまり食べないこと、となっています。

離乳食と聞くと、ほとんどの人は赤ちゃんにスプーンでピューレ状のものを食べさせることをイメージします。しかし、実はこれが赤ちゃんが離乳食を食べない原因になっているのではという考え方があります。

5~6カ月の赤ちゃんは自分の手でものをつかみ口に運ぶことができます。この時期、十分に安全に配慮し固形の食べ物を手づかみさせると、赤ちゃんは自分で口に運び、なめたりかじったりします。最初から食べたりはできませんが、自分で食べ物をつかみ口に運ぶことで、赤ちゃんは五感を十全に使い多くのことを学習します。たとえば、手と口の距離感、食べ物の味や匂い、大きさや硬さ、形、色、食感などです。

赤ちゃんが食べ物を受け入れるためには、それが自分にとって安全なのか確認する必要があります。手づかみ食べはその確認行為の練習をしているのです。手づかみ食べによって赤ちゃんの食行動に関するさまざまな能力が育つのです。

自分で食べた経験のない赤ちゃんは、スプーンで食べるという新しい行動の準備ができてないので、口を閉ざします。そして何度も無理にスプーンで与えると、さらに拒否感は強くなります。

相談のお子さんは知り合いの栄養士に依頼し、手づかみ食べを一から始めることで、少し時間がかかりましたが何でも食べるようになりました。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

2024
5/20
MON

Area

北海道外

その他