科学の神秘、見納め 札幌市青少年科学館、大改修へ 開館40年
開館40周年を迎えた札幌市青少年科学館(厚別区)で展示物の多くが見納めを迎えようとしている。22日から2024年3月末まで1年7カ月の休館に入り、老朽化する施設を改修して展示物を更新するからだ。全約230点のうち、一部を除いて大半が引退する計画で、中には親子2代にわたって愛された体験装置もあり、同館は「別れを惜しみに来てほしい」と呼びかける。
星を巡る旅に出る宇宙船が、レールから空に飛び立つと、眼前には一気に宇宙空間が広がった―。
「迫ってくるような映像でスリルが味わえる。引退前にもう一度、乗りに来たい」。7月28日に家族と訪れた厚別区の小学4年苅田惣一朗君(10)は、宇宙旅行を疑似体験できる装置「スーパードリームライド」に乗り、笑顔で語った。
「ドリームライド」は開館10周年を記念し、1992年に道内で初導入。100インチの大型画面を備えた箱型のシミュレーター(4列シート、16人乗り)で、宇宙の映像とともに乗り物が上下左右に動くのを楽しむ。「ジェットコースターさながらの迫力」(同館)と人気を博したが、コロナ禍で一時運休、7月26日に再開した。定員を減らし、8月21日まで運行し引退する。
石丸和正・リニューアル担当係長(45)は「札幌で小学生時代を過ごした保護者も懐かしんでいます」。
施設は81年10月に道内最大規模の科学館としてオープン。「宇宙・北方圏・原理応用」をテーマに、体験できる展示物を重視した。市営地下鉄東西線新さっぽろ駅などの近くに位置し、札幌のほぼ全ての小学校が天文を学ぶ授業で利用してきた。展示物の約半数は20年前から変わらず、開館時の展示も21点ある。
ただ修理部品の調達などが課題だった。ドリームライドの動きは、89年発売のパソコンが制御し、映像や音声はレーザーディスクプレーヤーが担う。更新が検討されたこともあったが、動きの制御と映像装置の組み合わせが特殊で変更できないまま、引退を迎えることになった。
引退する装置には、金属球に静電気をためて雷を発生させる「人工雷」や、ペダルをこいでライトを発光させる「光に変える」などの懐かしい“40年選手”がある。テレビ局の撮影技術を体験しながら出演者の気分が味わえる「テレビスタジオ」(92年導入)、ハンドルを回してくみ上げた水で水車を回す「水力発電」(88年導入)も姿を消す。
展示物は廃棄のほか、道内の他館への移設も検討している。14年以降に更新した「天文・地球科学コーナー」の展示やプラネタリウムは同館の再オープン後も引き続き使われる。
改修後の新科学館について、市教委は「北方圏の自然とくらし」をテーマに、「見て、触れて、考える」展示を引き続き目指す。理科実験をする「サイエンスショーコーナー」を3階フロアの中心に置き、小学の授業で訪れてもらい、使いやすいよう実験室の広さを拡大する。市教委生涯学習推進課の逸見知之・推進担当係長(42)は、「子どもたちがワクワク感を味わえる科学館に再び大きく生まれ変わる」とPRしている。
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