子宮頸がんワクチン、西胆振でも周知に力 機会逃した人に「キャッチアップ接種」

子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、厚生労働省が4月から接種の積極的な呼びかけ(勧奨)を再開したことで、西胆振の各自治体も周知に力を入れている。国が勧奨を控えていた約9年間に接種を受けなかった住民に対する「キャッチアップ接種」も始まっている。

国は2013年4月に定期接種を開始。直後に体の痛みや手足の動かしにくさ、睡眠障害などの症状を訴える女性が相次ぎ、2カ月後には勧奨を取りやめた。

その後の研究で、症状とワクチン接種の因果関係が認められず、国は「接種による有効性が、副反応のリスクを上回る」として勧奨を再開。ただ、接種は強制ではなく、副反応による健康被害が認定された場合は国の救済制度もある。

接種対象は小学6年~高校1年生相当の女性。これに加え、1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女性が本年度、キャッチアップの対象になる。

室蘭市の場合、本年度は小6~高1が1332人、キャッチアップは2330人が対象で、7月1日から接種を始めた。市立室蘭総合病院など室蘭、登別の14病院で接種できる。

その他の市町の対象者は、登別市は834人(キャッチアップ1346人)、伊達市は660人(同830人)、豊浦町が72人(同132人)、壮瞥町が51人(同62人)、洞爺湖町が106人(同208人)となっている。

いずれの市町も広報誌などで接種できる施設を案内している。

製鉄記念室蘭病院 山崎医師に聞く
効果とリスク「十分理解を」

製鉄記念室蘭病院産婦人科長の山崎智子医師に子宮頸(けい)がんの予防や、ワクチン接種を判断するポイントについて聞いた。(聞き手・渡辺愛梨)

性交で感染可能性 早期発見へ検診を

​山​崎​智​子​医​師​=​製​鉄​記​念​室​蘭​病​院​提​供​

​山​崎​智​子​医​師​=​製​鉄​記​念​室​蘭​病​院​提​供​

―公費で受けられる「2価」「4価」ワクチンとはどのようなものですか。

「ワクチンは子宮頸がんの原因となるHPVへの感染を防ぎます。『2価』は、悪性のがんになる可能性が高いウイルス16型・18型に対応。『4価』はこの二つに加え、良性腫瘍の尖圭(せんけい)コンジローマの原因となる6型・11型にも対応しています。16型・18型は、子宮頸がんの原因として最も多く、50~70%を占めると言われています」

―どのような人が接種を受けるべきでしょうか。

「HPVウイルスは性交渉で誰でも感染する可能性があるため、初めての性交渉より前に接種することが勧められています。ワクチンは薬ではないので、1度感染すると、予防効果はありません。一方で、性交経験があっても感染していない場合もあります。がん検診を受け、現時点で異常がなければ、効果があるかもしれません」

―ワクチンの副反応を心配する声があります。

「ワクチンは筋肉注射で、打った後は一時的な痛みや腫れが出る場合があります。アレルギー症状のほか、注射時の痛みや不安で失神することも。ただ、その後も続く重篤な症状について、国などはワクチンとの因果関係がないとの見解を示しています。接種をするかしないかは、個人の自由です。患者には接種の有効性や効果を理解した上で判断をしてほしいです」

―子宮頸がんに至るまでには、いくつかの段階があります。

「感染、(ウイルスが体に残る)持続感染、がんになる手前の前がん病変(異形成)という段階を経て、子宮頸がんになります。頸部に感染しても自然に消え、途中で陰性になる人もいます。一度陰性になれば、がんのリスクは低いと言われる一方、持続感染の状態が続けば、将来的にがんになる可能性もあります」

―子宮頸がんを予防するために重要なことはなんですか。

「欧米では接種が進み、子宮頸がんの前段階である異形成の数も減ったという結果が出てきており、一定の効果はあると捉えています。しかし、ワクチンはあくまでも一次予防。早期発見のために、年1回は検診を受けてほしいです」

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