12歳未満接種開始へ 打つ?打たない?悩む保護者 副反応心配でも感染避けたい

昼食を前に手を洗う保育園児たち。ワクチン接種に対する園や保護者たちの思いは複雑だ=12日、札幌市北区(石川崇子撮影)

新型コロナウイルス対策を巡り、政府がこれまで対象外だった12歳未満の子どもへのワクチン接種を3月にも始める方針を示したことを受け、道内の保育園や小学校に「副反応や将来への影響は大丈夫か」との戸惑いが広がっている。新たな変異株「オミクロン株」が急拡大する中、感染や重症化を防ぐワクチンへの期待感は大きいが、接種に慎重な保護者からは「未接種の子どもが差別や偏見の対象にならないか心配だ」との声も漏れる。

「ワクチンの副反応は若い人の方が大きいと聞いている。小さな子どもが打っていいのか、現場は不安を感じている」。0~5歳の園児108人が通う札幌市北区の三和新琴似保育園の菊地秀一園長(50)は、こう懸念する。政府は今回、5~11歳の子どもをワクチン接種の対象に加える方針で、同園では5歳の園児17人が対象になる見通しだ。

長時間のマスク着用や社会的距離(ソーシャルディスタンス)の維持が難しい子どもたちが通う保育園や幼稚園は、感染が急速に広がりやすい。札幌市内では2020年のコロナ感染拡大以降、保育施設や幼稚園で計47件のクラスター(感染者集団)が起きており、同保育園も手指の消毒や定期的な換気などの感染予防対策の徹底に神経をとがらせてきた。

道内の12歳以上のワクチン接種率はすでに8割近くに達している。感染力が強いとされるオミクロン株の感染者数が道内でも増える中、ワクチンが子どもへの感染拡大を防ぐことに役立つとの期待感はあるが、菊地園長は「国はオミクロン株にどの程度の効果があるのか、子どもの重症化のリスクや副反応の大きさなど安全性に関する情報をもっと示して」と訴える。

12~21日に3学期が始まる道内の小学校の教員たちも国の接種計画を注視している。釧路市の小学校教員は「感染が再び拡大して授業や行事に影響が出ないか心配だが、副反応を含めて情報が少なく、児童のワクチン接種に前のめりにはなれない」と漏らす。

小学4年(10)と2年(8)の息子がいる札幌市西区の自営業畠山麻美さん(41)は「子どもの成長にどんな影響が出るかわからない」として、ワクチン接種はしない考えという。息子たちも納得しているが「ワクチンが未接種の子どもは学校行事に参加できないなどの不利益が生じないかが気がかりだ」と話す。

一方、新型コロナで親族が亡くなったという同市中央区の主婦(43)は、小学3年の長女(9)と幼稚園に通う長男(5)への接種を前向きに考えている。主婦は「接種せずに感染するのは怖いが、副反応や健康への影響は心配。感染状況も見つつ、最終的に判断したい」と語った。

札幌市中央区の円山ため小児科の多米淳院長(61)は、5~11歳のワクチン接種について「保護者が正しい情報を基にメリットとデメリットを理解し、子ども本人の合意を得た上で接種するか決めてほしい」と強調する。保護者同士が接種するか、しないかの判断を尊重し合わなければ、子ども同士の差別や分断を生みかねないと指摘。「今すぐ接種するかを決める必要はない。周囲の状況なども踏まえ、総合的に判断してほしい」と話している。

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