連載【0カ月からの育児塾】

妊娠中の食事のポイントを助産師が解説

助産院で妊婦に出している食事の例について説明する高室さん(井上浩明撮影)

妊娠中の女性は、おなかの赤ちゃんの成長のため、さまざまな栄養を取る必要があります。体重の増加に抵抗のある人は多いですが、妊娠前よりも体重が増えるのは自然なことです。妊娠中の食事の注意点や体重管理について、北海道助産師会会長で助産院エ・ク・ボ(札幌)院長の高室典子さんに聞きました。

食べつわり我慢せず

妊娠初期につわりで、何も食べられない人もいます。赤ちゃんが大きくなっているか不安になるかもしれませんが、お母さんの体にもともと蓄えられている栄養があるため、赤ちゃんの成長に影響はありません。

食べないと気持ちが悪くなる「食べづわり」の人は、体重が増えるので心配になるかもしれません。高室さんによれば「2~3カ月ほどで終わることが多く、その後は普通の食事に戻ります」。食べたい時は我慢せず食べた方がいいのだそう。

つわりの時は水分摂取が大切

食べられる人も食べられない人も、つわりの時は水分を取ることが大事です。スポーツ飲料やお茶を少しずつ飲みましょう。

妊娠中の食事では気をつけなければならないものがあります。アルコールは胎児の発育に影響があるため避けましょう。また栄養ドリンクも「カフェインが多くお勧めできない」と言います。

鉄分摂取して|生ものは食中毒に注意

コーヒーは、「1日4、5杯をリラックスするために飲むのは大丈夫」と高室さん。ただ、カフェインは体を冷やすため、カフェインレスを活用しましょう。果物は糖分が多いので食べ過ぎず、つわりの時期以外は食後のデザートにするなど適量を心がけましょう。

妊娠中は抵抗力が弱るため、食中毒を起こしやすくなります。加熱処理がされていない食品はあまり取らないほうがいいとされています。十分に加熱されていない肉などではトキソプラズマ、生のイカなどの魚介類ではアニサキスといった寄生虫に注意が必要です。

妊娠中に食べてほしいのは、体を温める食べ物です。体が冷えると、逆子になったり足がむくんだりするため、根菜類の煮物、具だくさんのみそ汁がお勧めです。

妊娠の月数が進むと、赤ちゃんの体の骨ができていきます。小魚やヨーグルトなどカルシウムを含む食品を取ることが大切です。妊娠中は貧血になりやすくなります。高室さんは「放っておくと、お産までは大丈夫でもお産の後に大出血しやすくなります。サプリメントでも良いので、妊娠初期から鉄分を取ってください」と呼びかけます。

体重増加の目安は10キロ

妊娠中の適切な体重の増加は、健康な赤ちゃんを出産するために必要です。「30年ほど前は、赤ちゃんの分と自分の分で、倍の量を食べるようによく勧められました」と高室さん。しかし体重が増えすぎると、産道に脂肪が付き、お産は大変になります。高室さんは一般的な体形で「体重増加の目安は10キロ。太りたくないと思うかもしれませんが、妊娠中は期間限定で体が大きくなると思って」と言います。体重増加の目安については、日本産科婦人科学会も数値を公表しています。

増加の目安を超えてしまっても過度なダイエットはせず、散歩など軽い運動をすると体力維持にも効果的です。ご飯などの炭水化物を少なめにし、おかずを多めにして、一気に食べず小分けにしてゆっくり食べるようにしましょう。

高室さんの助産院で妊婦に出している食事の例を教えてもらいました。アサリのお吸い物は、体を温めます。切り干し大根はカルシウムが豊富。鉄分が取れるホウレンソウやインゲンは、ごまあえにしたり、かつお節をのせたりすることで、栄養の吸収率が高くなります。

高室さんは「妊娠中に栄養を意識した生活することは出産後、子供にご飯をつくることにも役立ちます」と助言します。

取材・⽂/石橋治佳(北海道新聞記者)

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