車のパワーウインドウ、子どもの挟まれ事故を防ぐには? 指切断や骨折、死亡事故も発生

写真はイメージ(keyphoto / PIXTA)

気温が上がり、車の窓を開ける機会が増える季節になりました。スイッチ操作で窓が開閉するパワーウインドウは便利な機能ですが、誤操作などで腕や指を挟まれてけがをする危険性があります。5月には東京で子どもが首を挟まれて亡くなる事故が起きました。このような事故を防ぐためには、子どもを乗せる時は窓が操作できないようにロック機能を使い、運転者は窓を閉める際に目視で確認するなど注意が必要です。

閉まる力の制御難しく/ロックや目視確認を

「パワーウインドウが閉まる力は意外と強く、大人の力でも手で止めるのは難しい」。日本自動車連盟(JAF)札幌支部事業課事業係長の安藤純一さん(50)は注意を呼び掛けます。

5月に東京で起きた事故では、車の後部座席でチャイルドシートに座っていた2歳の女児が、窓に首を挟まれました。安全ベルトが適切に装着されないまま身を乗り出し、運転者が気付かずに窓を閉めたとみられます。

なぜ、挟み込み事故が起こるのでしょうか。安藤さんは「開閉スイッチの誤操作や、運転者が他の窓を閉める際にしっかり確認していないことが多い」と話します。

国民生活センターなどが管理する事故データベースによると、車のパワーウインドウに挟まれてけがをした事例は、2008年10月から全国で10件以上発生し、そのうち半数が10歳未満といいます。開閉スイッチで遊んでいた子どもが、閉まる窓に指を挟んで切断したケースや、同乗者が窓に手を置いていることを知らずに運転者が窓を閉めて腕を骨折した事例などがありました。

パワーウインドウは、スイッチ操作でモーターが駆動して窓ガラスを電動で上げ下げします。ほとんどの車の運転席にはすべての窓の開閉スイッチとともに、操作をロックするスイッチがあります。このロック機能をオンにすると、各窓の開け閉めは運転席でしかできなくなります。

車種によっては窓に挟み込み防止機能が備わり、閉まるガラスに物が挟まるなど負荷がかかると上昇が止まり、安全のためガラスが数センチ下がります。

軽自動車でパワーウインドーの閉まる力を実験したところ、ダイコンは簡単に切れた(JAF提供)

軽自動車でパワーウインドウの閉まる力を実験したところ、ダイコンは簡単に切れました(JAF提供)

パワーウインドウが閉まる力はどれほど強いのでしょうか。JAFが行った実験によると、挟み込み防止機能がついていない軽自動車とミニバンでは、閉まる窓にダイコンが挟まってもガラスは止まらず、簡単に切れました。指に見立てた硬いゴボウでも結果は同じでした。

さらに、8歳児は閉まる窓を両手でも止められず、成人男性は片手で止められましたが、ガラスを下げることはできませんでした。

安藤さんは、挟み込み事故を防ぐために ①子どもを乗せるときは、子どもが窓を開け閉めできないようにロック機能を使う ②運転者が他の座席の窓を閉める場合は「窓を閉めるよ」などと声掛けし、安全を目で確認することも欠かせない―と話します。

運転者が他の座席の窓を閉めるときは、声掛けとともに、顔や手が出ていないか確認する(写真は人形の手)

運転者が他の座席の窓を閉めるときは、声掛けとともに、顔や手が出ていないか確認する(写真は人形の手)

子どもが自分で窓の開閉ができないように、ロック機能を使います

子どもが自分で窓の開閉ができないように、ロック機能を使います

こども家庭庁はホームページでハンドブックを公表し、事故を防ぐポイントを紹介しています=こちら=。ハンドブックでは、パワーウインドウに子どもが挟まれる事故は0~3歳くらいが特に注意が必要といいます。

取材・文/米山貴志(北海道新聞記者)

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