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周産期の女性を食でサポート 札幌保健医療大准教授・金高有里さんインタビュー

周産期の女性を支えるnipocafe(ニポカフェ)を設立した金高有里さん(岩崎勝撮影)

妊婦や産後の女性を対象に、バランスの整った食事とレシピを提供し、栄養相談に乗る―。札幌保健医療大栄養学科准教授の金高有里さん(42)は、管理栄養士を志す学生たちと隔月で親子の栄養チャージカフェ「nipocafe(ニポカフェ)」の催しに取り組んでいます。金高さんが食にかける思いを聞きました。

金高 有里さん

札幌保健医療大准教授

きんたか・ゆり 兵庫県姫路市出身。共立女子大学大学院修了。博士(学術)。酪農学園大学専任講師などを経て2021年から現職。管理栄養士。専門は解剖生理学と母子栄養。23年4月に学生サークル「nipocafe」を設立。名前には、頑張るママをにこにこに、親子の心と体をぽかぽか元気に、という思いを込めた。12歳と7歳の子を育てる。

学生と栄養カフェ 人を健康に笑顔に

――2023年4月にニポカフェを始めて1年3カ月ですね。

「学生サークルという形で、札幌市内のコミュニティースペースや喫茶店を借り、これまで13回開き、大人161人、子ども125人が参加しました。芸能人が『産後すぐ痩せた』と発信するなどSNSに情報があふれる中で、周産期に必要な栄養について科学的なエビデンスに基づいた知識を得られ、気軽に相談できる場があるといいなと始めました。学生28人が、レシピの考案と調理、託児を担います」

――子ども食堂ならぬ、いわば「母親食堂」ですね。

「日本では、育児を地域みんなで取り組むより、母親と父親だけで完結させる風潮があると感じます。母親が自分を後回しにしてしまいがちな時期だからこそ、リラックスして自分を整える場が必要です」

――直近の6月の献立は、五穀米ご飯と野菜スープ、コロッケにオクラのツナあえでした。

「『ジャガイモはビタミンCとカリウムが豊富で栄養満点』といった栄養のポイントをまとめた紙も、レシピに添えて配布しています」

札幌市内で6月23日に開かれたニポカフェで、子どもたちに話しかける金高有里さん(奥)(岩崎勝撮影)

――今後の方針は何ですか。

「この取り組みをモデルケースとして広く伝えて多拠点化する、母子栄養に特化した資格制度を創設する、企業と組んで社員の福利厚生の一環としてニポカフェに参加してもらう、などを計画中です。秋には父親向けの調理実習込みの会も予定しています」

――食に関心を持ったきっかけは。

「父が祖父から継いだ診療所を長女として守ろうと、医学部受験を目指して勉強中の高校3年の時、ご飯を食べられなくなりました。当時はスケート競技や芸能活動もしており、疲れ切って動けなくなって。摂食障害になる前に体が悲鳴を上げたのです。もっと痩せている方がいいという認識もあり、食事をおろそかにすることに何の罪悪感もありませんでした」

――さまざまな理由が重なったのですね。

「肝機能が悪化し、半年間入院しました。入院中、偏った食生活で体を悪くした患者さんを目の当たりにし、食は人が生きる根幹なんだと気づきました」

ニポカフェではキッズ食や離乳食も提供している。中央が金高有里さん(岩崎勝撮影)

――管理栄養士になった後、研究の道に進みました。

「大学院では、なぜ食べられなくなったり、食べ過ぎたりするのかという摂食調節の研究をしました。酪農学園大で勤務していた09年、親の栄養状態が生まれる子どもの疾患のリスクに関連があると示す、英国の研究者が提唱した『DOHaD(ドハッド)学説』を知り、衝撃を受けました」

――どう影響するのですか。

「日本では、18~29歳の女性のやせ、体格指数(BMI)18.5未満の割合は約20%ですが、母親が低栄養だと胎児が低出生体重児になりやすく、成人後に生活習慣病になりやすいことが知られています。また、私の研究で、妊娠期に多く摂取する必要のある葉酸は、逆にサプリで過剰摂取すると、子どもが代謝性疾患になるリスクが上がる可能性があると分かりました。でも、こうしたことを習う機会はほとんどありません」

――情報発信にも力を入れていますね。

「栄養学について最後に学んだのは中学の家庭科、という人は多いと思います。音声SNSのクラブハウスで、家庭科の教科書をアップデートした形で伝える『食とカラダの学校』を21年秋から、毎週続けました。現在は中断し、今後は動画での発信に切り替えます。さらに20年、遊びながら学べる『食を育むまんまカルタ』(群羊社)を作りました。全ての活動は、食を通して人を健康に、笑顔にしたい気持ちから出発しています」

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

nipocafe(ニポカフェ)

次回のニポカフェは8月24日正午~午後2時、コープさっぽろ きたひろしま店(北広島市中央3)のトドックステーション。大人は千円(託児つき)、離乳食・キッズ食は500円。8日までに専用サイトから申し込む。定員12組前後。申し込み多数の場合は抽選となる。

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