父親が育児しやすい北海道に ファザーリング・ジャパン北海道、体制一新で活動拡充
父親の育児を支援する任意団体として活動してきた「ファザーリング・ジャパン北海道」(札幌)が7月にNPO法人になり、8月にキックオフイベントを行いました。これまでやってきた、育児しやすい環境づくりを企業に働きかける活動に加え、父親向けの講座や父親どうしが悩みを話す場づくりなど、個人への支援にも力を入れていきます。
ファザーリング・ジャパン北海道は2017年、東京のNPO法人ファザーリング・ジャパンの支部も兼ね、父親向けフリーペーパーなどを作成していた団体「チチトミチ」のメンバーらで発足。育児に理解のある管理職「イクボス」を増やすために企業へ働きかけたりセミナーを開催したりしてきました。
近年は創設メンバーの子どもたちが成長したこともあり、あまり積極的な活動はしていませんでしたが、子育てに悩む父親は依然多いことから、情報を共有したり、語り合う場をつくったりしようと法人化することを決めました。運営に幼児を育てる父親たちが新たに加わりました。
運営を担当する理事は札幌や近郊の会社員、父親サークルのNPO代表、フリーアナウンサーの女性らです。ホームページやパンフレットを作って事業を明確化し、法人(1口3万円)や個人(年6千円)の会員を募っています。
代表理事で会社役員の谷内政昭さん(49)=札幌市=は、立ち上げ時からのメンバーで、中学生と高校生の2児の父親。育児休業を取得した札幌の父親らでつくる「パパ育休プロジェクト」のメンバーとしても活動してきました。
24年度の国の雇用均等基本調査では、全国の男性の育休取得率40.5%でしたが、同年度の北海道の「就業環境実態調査」によると道内の男性の育休取得率は33.0%。谷内さんは「職場に育休を取得できる空気がないという話をまだ聞く。北海道には、育児をしたいと思ってもロールモデルがいない、どうすればいいかわからないという人はまだ多い」と強調します。

代表理事となり、「父親が楽しく育児ができる手伝いをしたい」と思いを語る谷内政昭さん
NPO法人格は7月30日に取得。今後は、料理教室など父親が子どもと一緒に参加できるイベントを行ったり、父親が悩みを吐き出せる場を作ったりしたいと考えています。「職場でも家庭でも弱音を吐きにくいということはある。いろいろな人の話を聞いて、生き方を知れば追い込まれず生きやすい」と谷内さんは語ります。このほか、子どもとの関わり方を伝える講座、妊娠期に夫婦で参加できる独自の両親学級なども計画します。
理事の一人、星野恵さん(44)=札幌市=は、母親の産後うつ予防を目指す「一般社団法人相互支援団体かえりん」(札幌)代表で4児の母親。育児をする父親の孤立化を課題と感じ、22年から同団体の活動に携わっています。「育児中の父親のつらさは、フォーカスされにくい。主体的に育児をして誇りを持てる父親が増えてほしい」と語ります。
こうした父親たちの活動について、北海道文教大の吉岡亜希子教授(社会教育学)は、「父親ならではの苦しさを共有し、声を上げていくことは重要」と強調します。「民間団体の活動が広がることで、父親が育児することに対する社会的理解が進み、社会が変わる一歩になる」と評価しています。
取材・文/ 石橋治佳(北海道新聞記者)
NPO法人ファザーリング・ジャパン(東京) 有志らが2006年に設立。父親対象の育児講座、講演、育児支援イベントの開催などを通じて、父親の子育てや子育てしやすい職場環境づくりを支援する。「イクボス」を増やす活動にも取り組む。会員は500人以上、全国各地に12の支部がある。
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