ランドセルの色 多様化でも性別で違い 男の子に赤 意思尊重したいけれど…悩む保護者

赤いランドセルを背負った高尾桂さんの次男。同級生は黒が多いというが高尾さんは「次男は気にしていないよう」と話す(高尾さん提供)
ランドセルの色やデザインは多様化していますが、色選びの傾向は性別による違いが大きいです。「女の子向け」「男の子向け」と、性別ごとに商品が紹介されることも多く、子どもが違う色を欲しがる場合に悩む保護者もいます。
北海道新聞のウェブサイト「ママトーク」が道内の保護者を対象に行ったアンケート(昨年8月、回答者446人)では、子どもに購入したランドセルの色は女の子は1位が「紫/薄紫」27.1%で、2位「桃」、3位「水色」。男の子は1位の「黒」が約6割と圧倒的に多く、2位「紺」、3位「青」でした。順位は、ランドセルメーカーでつくる「ランドセル工業会」(東京)の全国調査でも同様です。
男の子に赤 ランドセル選びに苦労
「赤のランドセルを持つ子は周りにいないのでどうだろう」。千歳市の団体職員高尾桂さん(44)は、新1年生の次男(6)のランドセル選びの際、赤が欲しいと言われ、最初は戸惑いました。次男は和太鼓が好きで、憧れの人の太鼓が赤色。「太鼓と一緒の赤がいい」と話していました。
「何か言われても理由が説明できるし、気に入ったものであれば6年間使い続けるだろう」と赤色を購入。ただハートの装飾があるなどのかわいらしいデザインがほとんどで、好みの商品を探すのに苦労しました。スポーツブランドのランドセルをインターネットで買いましたが「男女どちらでも選びやすいジェンダーレスなランドセルがもっとあればいい」と話していました。
保護者には、色の趣向が性別のイメージと違うことで、目立つことやからかわれることへの懸念がある場合もあります。「いじめられないかなと思って、真っ赤なランドセルは選べなかった」。現在小学5年生の長男(10)から赤いランドセルが欲しいと言われて悩んだ十勝管内足寄町の主婦小川静さん(48)はこう振り返ります。当時住んでいた函館の商業施設で1時間以上悩みました。黒色で縁、内側、ステッチ、背中が赤いランドセルを購入。成長して赤い服を好んだりしなくなりましたが「ランドセルは気に入って使っています」。
4~6歳の男の子 好きな色2位は赤
学研教育総合研究所の幼児白書(2022年9月調査)によると、4~6歳の男の子の好きな色は、1位は青、2位は赤です。女の子の1位はピンク、2位は紫でランドセルの人気色と重なりますが、男の子は異なっています。ジェンダーに詳しい、北海道教育大学函館校の木村育恵教授(教育社会学)は、「男性の色、女性の色というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が社会にあり、子どもたちも知らないうちに学んでいる」と指摘します。それが他者への評価に影響し「性別によって、選んだ色が奇異な目で見られたり、からかわれたりするという環境がある」と話します。
女の子が黒や青を選ぶより、男の子が赤やピンクを選ぶ方が保護者の心配は大きくなりがちです。「男性カラーを女性が身につけると地位が高い男性に追いつくということで評価される。保護者に女性を下に見る意識はないと思うが、男性中心の社会構造が維持されている。女性に男性が合わせることを集団内でばかにする力が働いてきた」と背景を解説しました。
何色でもいい 安全安心な環境が必要
大人が子どもの性別で与える物を変えてしまうケースもあります。教育や保育の現場で無意識の偏見がないかは意識されつつありますが、「バイアスを捉え直して新しい価値観をつくるところまでは行き着いていない。男の子が赤やピンクのランドセルを選んでも、安全安心だという社会、学級、集団づくりが必要」と話しています。
メーカー ジェンダーレス意識も
ジェンダーレスを意識した商品や、子どもが好きな色やデザインを選べる環境づくりを促すメーカーもあります。
土屋鞄製造所(東京)は、2021年にジェンダーレスのランドセル「RECO(レコ)」を発売しました。男の子でも背負いやすい赤がないか-という保護者の声などを受けて開発し、自由な色選びがコンセプト。シンプルなデザインが特徴です。

土屋鞄製造所のジェンダーレスのランドセル「RECO」(同社提供)
来年度の入学生向けには計22色を販売。同社は性別で分けた人気色の提示をしていません。事業企画部長の小川裕一朗さんは「男女でどっちの色というのはもったいない。性別問わずに喜んでもらえたら」と話します。
大手ランドセルメーカーの「セイバン」(兵庫県)は23年2月、子どもが好きなランドセルを選べるようにとの思いを込めた動画をホームページ(HP)で公開。子どもが「保護者が選んでほしそう」「自分が使いたい」の二つのランドセルを選ぶ様子を撮影したドキュメンタリーです。登場する7人全員が、違う色やデザインの二つを選びました。
保護者に行ったアンケートで、色やデザインを親主導で決めたという回答が多かったことが制作のきっかけといいます。広報担当の徳田桃子さんは「子どもの『好き』を尊重したランドセル選びを後押しできれば」と話していました。
取材・文/石橋治佳 (北海道新聞記者)
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