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学校給食の食材高騰 工夫でしのぐ 魚フライ→高野豆腐 葉物野菜→モヤシ

札苗小の給食。取材した1月16日は、塩ラーメン、シナモンポテト、オレンジ、牛乳だった

メンチカツバーガーにコーンシチュー、カレーうどんに青のりポテト。子どもが喜びそうなメニューが目に入りました。一見外食店のメニューに見えますが、いずれも札幌の公立小学校の献立表です。記者(43)が小学校に通っていた約30年前とは違います。今の給食はどうなっているのでしょうか、調べてみました。

「いただきます」。1月中旬、札幌市立札苗小2年生の教室に児童の元気な声が響きました。この日のメニューは、塩ラーメンにシナモンポテト、オレンジ、牛乳。献立表を見た時は、ファストフードのメニューのようで驚きました。「野菜が足りないのでは」と心配になりましたが、ラーメンの具にホウレンソウやニンジンも入っており、野菜も取れているようです。

本年度の給食の献立は、札幌市教委が基準となる献立を作り、これを元に、各校の栄養教諭がそれぞれに献立を作って学校ごとに調理します。

札苗小栄養教諭の松宮路子(みちこ)さん(53)は、近年は物価高騰や漁獲量の減少で食材調達に苦慮しているとし「栄養価を落とさず、単価を安くするよう工夫しています」と話します。市学校給食栄養士会会長も務める松宮さんによると、30年ほど前は道産のサンマやサケを使えましたが、今は、魚のフライは高野豆腐で代用することもあります。「道産品や旬のものをできるだけ使いたいが難しくなりました」と語ります。

ほかの自治体でも物価高騰の影響が出ています。旭川市では主菜や副菜に費用を回すため、ゼリーなどのデザートやマヨネーズなどのパック入り調味料の回数が10年前に比べ半分ほどに減りました。旭川市教委は「魚や果物は選べる種類が少なくなりました」と話します。

おいしさ、栄養価維持に苦心

函館市では物価高騰の影響のほか、イカの不漁で函館名物のイカめしが2019年から提供できなくなりました。代わって漁獲量が増えているブリを食材として使い、たれカツや竜田揚げとして提供しています。

「豚肉の部位を肩ロースからモモ肉に、葉物野菜の代わりにダイコンやモヤシなどを使っています」(釧路市)、「食材選択や献立作成に栄養士が苦慮しています」(北見市)など、各地で献立作りに苦心する様子がうかがえます。

道内自治体では物価高騰を受け、給食の食材費が上昇しています。札幌市の給食にかける食材費は本年度、1食当たり小学3・4年生で309円、中学生で370円と10年前と比べ67~80円値上げしました。米飯や牛乳の費用を引くと、おかずにかける費用は多くありません。学校給食の関係者は「コメの価格が上がっており、今後はおかずに使える材料費はさらに少なくなります」と懸念します。

材料費の高騰を受け、値上げに踏み切る自治体もあります。北見市は、現状のままでは栄養基準を満たした給食は提供できないとして、25年度の給食費を値上げする方針。保護者の負担軽減策についても検討しているといいます。

道教委に勤務経験があり、文部科学省の学校給食調査官も務めた田中延子さん(東京在住)は「全国で一定水準の質を確保している日本の給食制度は世界一。物価高だからと栄養量が不足してはいけません。子どもの健康を守るため給食にかける食材費を上げて、質量ともに充実させるべきです」と話しています。

全国無償化 議論始まる

保護者の負担軽減や子育て支援を目的に、全国公立小中学校の学校給食を無償化しようという議論が始まっています。

政府は2023年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で、給食費の無償化実現に向け、調査を行うことを明記しました。これを受け、文部科学省が調査したところ、全国の3割の自治体で公立小中学校の給食無償化を実施(同年9月時点)。道教委による23年度の調査では、道内179市町村のうち54市町村で無償化を実施していました。

文科省は昨年末、無償化した場合の課題をまとめました。それによると、必ずしも格差是正にはならないことや、実施した場合約4832億円の安定財源が必要となることが指摘されました。

24年の臨時国会では立憲民主、日本維新の会、国民民主の3党が公立小中学校の給食費を実質無償化する法案を提出。今月24日召集の通常国会でも議論される見通しです。

取材・文/ 田口谷優子(北海道新聞記者)

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