小学校受験、北海道内で関心 立命館慶祥小の開校きっかけ

模擬テストの後、問題の解説を聞きながら答え合わせをする子どもたち(玉田順一撮影)
2022年に田中学園立命館慶祥小(札幌市豊平区)が開校したことなどをきっかけに、北海道内でも小学校受験への関心が高まっている。小学校受験は首都圏で加熱しているが、札幌市内でも受験対策を行う幼児教室に子どもを通わせる家庭が増加傾向にある。これまで道内ではなじみの薄かった小学校受験について、関係者や経験者を取材し、その背景に迫った。
塾に通う子ども増加 英語教育など魅力
「同じ季節の絵を線で結びましょう」。小学校・中学校受験専門塾FUYUNO(札幌市中央区)で11月14日、子どもたちが講師からの指示を聞きながら、試験本番を想定した問題と向き合っていた。内容は図形や言語で、試験監督が読み上げる問題を聞き取り、解いていた。
講師を務めるのは冬野恒史さん(46)。過去に北海道教育大付属函館小や立命館慶祥小で教員として勤務し、入試に携わった経験を持つ。同校の教員を務める中で、小学校受験への関心が高まっていることを実感し、「公立学校にはない魅力を持つ国立や私立小学校に入学するための手助けがしたい」と今年6月に同塾を設立した。

小学校・中学校受験専門塾FUYUNOで模擬テストに挑む子ども
立命館慶祥小は「世界に挑戦する12歳」を教育理念に掲げ、プロ野球北海道日本ハムファイターズの元選手田中賢介さん(43)が22年4月に設立した。体育や音楽などの実技教科を英語で学ぶ「イマージョン教育」を導入するなど、英語教育に力を入れることで知られる。一定の基準を満たせば、立命館慶祥中(江別市)への学内進学が可能だ。
札幌圏で小学校受験を検討する場合、志望校は道教大付札幌小のほぼ一択だったという。新さっぽろ英才幼児教室(札幌市厚別区)で代表を務める清野勝彦さん(52)は「田中学園ができてから一気に小学校受験を検討する家庭が増えた」と話す。同教室では立命館慶祥小が開校した2022年以降、教室に通う子どもは2倍に増えた。
同教室の卒業生で、同校2年の造田蒼士(ぞうだあおし)さん(8)は、もともと英語が好きだったことや、新しい校舎にひかれて入学した。父親の聖明(きよあき)さん(39)は本人の意志を尊重するとともに、「将来グローバルに活躍できる人材になってほしかった」と思い、5歳から同教室に通い始め、筆記試験や面接対策を重ねて合格した。
幼児教室「こどもクラブ」(本部・札幌市中央区)では9月、同教室に通う子どもの保護者を対象に開いていた私立小学校などの受験セミナーを、子どもが同教室に通っていない保護者にも初めて拡大した。申し込みが殺到したといい、同教室の担当者は「英語やICT教育に早期から力を入れたいと考える家庭が増えている」と話す。
道教大札幌校の平野直己教授(臨床心理学)は最近道内の公立学校で相次ぐいじめや教員の不祥事などで、「公立学校へ預けることへの保護者の不安が増している」と指摘する。「試験を通じて選ばれた子どもが集まる国立や私立小学校への入学を希望する家庭が増えるのは当然の流れ」と説明する。「子どもたちが学ぶ環境の選択肢が増えることは良いこと。公立、国立、私立の学校が刺激し合いながら切磋琢磨(せっさたくま)することで北海道の教育レベルが底上げされるきっかけになれば」と話している。
理解力や協調性を試験 道内の国立・私立8校
2025年度入学者を対象に募集があった北海道内の私立小学校は、立命館慶祥小、まおい学びのさと小(空知管内長沼町)、北海道シュタイナー学園いずみの学校(胆振管内豊浦町)、函館三育小の4校。国立小学校や義務教育学校は、道教大付札幌小、道教大付函館小、道教大付旭川小、道教大付釧路義務教育学校の4校で、国立・私立計8校となっている。
各校によって求められる力や評価基準は異なるが、試験ではおおむね子どもの理解力や人の話を聞く力、集団の中での協調性や自分の考えを伝える表現力などが問われる。試験では大きく分けて「筆記」「行動観察」「口頭試問」に分かれる。
筆記では、季節ごとの行事などから仲間外れを探す「常識」や、重ねたり回転させたりした形を探す「図形」、しりとりで名前をつなげる「言語」などが課される。行動観察は、集団で共同作業をして、周りと協力する様子や集団での立ち振る舞いなどがチェックされる。口頭試問ではカードや写真を見せて、それが何かを答えさせる。
保護者同伴の面接を課す学校も多く、時間は5~10分程度。家庭の教育方針などが問われる。
各校のホームページに毎年春から秋にかけて、試験やオープンスクールの日程などが公開される。小学校・中学校受験専門塾FUYUNOの冬野恒史さんは「各校で求められる力や評価基準が異なるため、受験する学校の教育方針を早めにしっかり確認しておくことが重要」と話す。
取材・文/藤山洸一郎 (北海道新聞記者)
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