赤ちゃんの頭の変形、原因や改善策は? 札幌・コドモックルにヘルメット治療が可能な外来新設

写真はイメージ(はる / PIXTA)
赤ちゃんの頭の形のゆがみは、保護者の悩みの一つ。病気が要因でない場合は自然に治ることもありますが、重度だと治らず、ヘルメットによる治療を望む保護者が増えています。北海道立子ども総合医療・療育センター(コドモックル、札幌)に新設された「赤ちゃんの頭のかたち外来」を担当する小児脳神経外科医吉藤和久さん(56)に、ゆがみの要因や改善策を聞きました。
「ずっと同じ方向を見ていて、向き癖がひどかった」。深川市の女性(36)は9月上旬、生後5カ月だった次女の頭の形が気になり、コドモックルの外来を訪れました。「ぱっと見ても分からない」とも思ったといいますが、頭を上から見ると耳の位置に違和感がありました。
治療しないと治らない変形と言われて「成長した時に、どうなるか分からない。今しか治療はできないので悩む暇はなかった」と、同月下旬にヘルメット治療を始めました。女性は「耳の位置やおでこのでっぱりがきれいになってくれたら」と期待しています。
頭がゆがむ原因は2つ、病気の場合も
赤ちゃんの頭がゆがむ原因は、大きく分けると二つあります。一つは、胎児期から幼児期に発症する先天性の病気「頭蓋骨縫合早期癒合症」。乳児の頭は大人と違って骨が複数に分かれ、骨の間に隙間があります。急速な脳の成長に合わせて頭蓋骨を拡大していくためで、通常は10歳ごろにかけて骨が少しずつ一体化します。ですがこの病気の場合は、骨が早期に結合してしまいます。脳の成長に影響を与えることが多く、手術が必要です。吉藤さんは「早期発見ほど負担の少ない手術で済み、治療結果も良い」と話します。
圧倒的に多いのは、同じ方向を向いて寝ることなどを理由とした「位置的頭蓋変形」です。向き癖などによって後頭部が斜めにゆがむ「斜頭症」、あおむけに寝ることが要因で「絶壁」とも呼ばれる「短頭症」、横向きに寝ることで側頭部に圧力がかかり頭部が縦に長く伸びて後頭部が著しく突き出る「長頭症」の3タイプがあります。
位置的頭蓋変形は病気ではなく、発達に影響がないため「個性とも言える」と吉藤さん。寝返りをするようになると自然と治ったり、寝かせ方の工夫や、うつぶせの練習(タミータイム)によって改善していったりすることが多いです。
ヘルメットの矯正希望増加
ただ、ゆがみが大きく耳の位置が左右非対称になったり、おでこにまでゆがみが及んだりするなど、重度の変形は自然に治るのは難しいといいます。頭に専用のヘルメットを着けて矯正を行う「ヘルメット治療」が効果的で、日本では2012年から保険適用外で行われています。
ヘルメット治療を行う医療機関は限られています。コドモックルも以前は行っていませんでしたが、吉藤さんは「変形の程度が強い場合に、自費診療でもヘルメット治療をやりたいと言われることが5年ほど前から散見されるようになった」と話します。頭蓋骨縫合早期癒合症の早期発見にもつなげようと、8月23日に外来を開設しました。

ヘルメットのサンプルを持つ吉藤さん。高強度樹脂を使ったプラスチック製で平均180グラムほどという
治療には、乳児の頭を光学カメラで3Dスキャンして制作する専用のヘルメットを使います。頭蓋骨の出っ張った部分がそれ以上突出しないように抑え、へこんでいる部分の骨の成長を促す仕組みです。治療を始める前にエックス線検査で頭蓋骨縫合早期癒合症でないことを確認し、視診や触診で変形の度合い、ヘルメット治療が適切かどうか判断します。
早期の発見、対策が大切
月齢が早いほど効果があり、生後2~7カ月に始めます。入浴以外の1日23時間、半年ほど着用します。月1回通院し、費用は製作費と6回の診療費で計55万円です。
外来は、毎週金曜日。予約制で、医療機関などからの紹介状が必要です。病的変形か位置的変形かの判断は、難しい場合もあります。いずれも頭の骨が柔らかい早期での発見と対策が大切で、吉藤さんは「ゆがみが気になる場合、乳児健診やかかりつけの小児科で早めに相談を」と話します。
寝かせ方の工夫で予防・改善
顔の向き、時々変えて
頭のゆがみの改善策は、どう実践すると良いのでしょうか。
赤ちゃんの寝かせ方のポイントは、頭の一部に圧力が集中するのを避けることです。できるだけ同じ方向を向かせないようにします。赤ちゃんは興味のある物などがある所に顔を向けがちなため、授乳のたびに頭と足の位置を入れ替えたり、話しかける方向を変えたりすると良いです。
うつぶせの練習は、頭に圧力がかかる時間を短くできるため効果的といいます。ただ、赤ちゃんの入眠時のうつぶせ寝は突然死のリスクがあり危険です。必ず目が覚めている時、大人が見ている状況で行います。
ゆがみが気にならない場合でも、実践すると予防になるといいます。
取材・文/石橋治佳(北海道新聞記者)
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