連載【0カ月からの育児塾】最終回
【助産師監修】世代で違う育児の常識 抱っこ、肌ケア、日光浴…変化する「常識」

写真はイメージ(プラナ / PIXTA)
育児の方法は時代とともに変わっています。育児中の人は祖父母らからの助言に戸惑い、祖父母世代は今の育児に驚く人もいるかもしれません。どのように変わっているのか、北海道助産師会会長で助産院エ・ク・ボ(札幌)院長の高室典子さんに聞きました。
「若いお母さんから、知らないおじいちゃん、おばあちゃんに育児のことで注意された、実家の親と意見が合わないといった声を聞きます」と高室さん。育児の「常識」が世代によって違うことが影響しています。
「抱き癖」気にせずに
抱っこでは、以前は「抱き癖」がつくため、赤ちゃんが泣いてすぐに抱っこをするのは良くないと言われていました。抱っこせずに泣かせたほうが肺がよく広がって健康になる-ともされていました。今は抱っこで赤ちゃんが安心感や信頼感を覚え、自己肯定感を育むとされています。高室さんは「『抱き癖』は気にせず、たくさん抱っこしましょう」と強調します。
離乳食は、かつては大人がかんで小さくしたものを食べさせたり、大人が使った箸で赤ちゃんの口に入れたりすることがありました。ですが大人の唾液から赤ちゃんに虫歯菌がうつることがあるため、「今はやってはいけないこと」。スプーンやフォークは大人と別にします。
オムツ、授乳をやめるタイミングも変わりました。以前は、オムツは2歳までに、授乳は1歳になったらやめるとされていました。現在は、いずれも子どもの成長に合わせることを大切にします。母乳は好きなだけ飲んで良いとされ、高室さんは「赤ちゃんと、お母さんのタイミングで卒乳の時期を決めていい。『1歳なのにまだ飲んでいるの』という声かけはしないで」と話します。
肌は保湿が大事
肌のケアは180度変わりました。以前はベビーパウダーなどで肌の乾燥を促しましたが、今は保湿をして湿疹を予防します。ローションやクリームなどを塗ることはスキンシップにもなり、「塗りながら親子の絆作りにもなるベビーマッサージは、現代に広がってきた育児方法です」と高室さんは言います。
風邪予防に良いとされてきた日光浴は、最近は紫外線の懸念があります。外気浴は大事ですが、日差しが強い時間帯を避ける、日焼け止めを塗る、帽子をかぶるなど、赤ちゃんのうちから紫外線対策が必要です。
根拠ない「3歳児神話」
3歳までは母親が家庭で子育てに専念すべきだという「3歳児神話」は、根拠がないことが分かっています。「働く女性が増えています。子どもと一緒にいる時間に適切な関わりがあれば問題ありません」と高室さん。「昔と今を比べると、こんなに違いがあります。育児が少しずつ変わってきていることを、世代が違っても理解し合えたら良いですね」と話しました。
心の発達面の特徴は、自分から話そうとすることです。「うごうご」などと話しかけてきたら、じっと聞いてあげて、話が終わったら、ママやパパからも話しかけることが重要です。
\ 動画でも解説しています /
連載終了・高室さん「悩んだら声上げて」
「0カ月からの育児塾」は、今回で終わります。高室典子さんに、これまでを振り返ってもらいました。
――2021年11月から3年にわたり、乳児の育児のコツ、妊娠期の悩みなどについて取り上げました。
「3世代、4世代家族が多い時は、子育てを手伝ってくれる人、分からない時に聞く人が周りにいました。今は核家族です。少子化も進み、身近に子育てをする人がいないので、モデルにする育児がありません。インターネットで情報は得られますが、どれが自分に当てはまることなのか、わからないこともあると思います。悩む親たちの一助になればと思ってきました」
――交流サイトなどで育児のつらさが注目されています。
「育児の苦労や悩みごとは、実は今も昔と変わっていません。でもコロナ禍も影響し、悩みを1人で抱え、孤独に育児をする母親は増えました。さまざまなサポートの場があるので、困っている、と声を上げてほしいです」
――育児をする人、支える人にアドバイスを。
「育児の『基本のき』を連載で紹介してきました。悩んだ時、参考にしてもらえたらと思います」
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過去の記事はこちらから読むことができます。
取材・⽂/石橋治佳(北海道新聞記者)
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