「起立性調節障害」を抱える札幌の小6・北田さん、夢の菓子店を母親と開業 「同じ悩み持つ人の希望に」

開業初日に手作りの米粉のスコーンとドーナツを販売する北田怜奈さん(左)と弥生さん
自律神経の調節がうまくいかず体調不良になる「起立性調節障害」を抱える札幌市の小学6年生北田怜奈さん(12)と母、弥生さん(38)が、米粉の焼き菓子製造販売店「れなねこのお菓子屋さん」を8月18日に開業しました。胃腸に優しい菓子作りを楽しむ怜奈さんの夢を弥生さんが後押しし、同市南区のレンタルキッチンで月1、2回営業します。弥生さんは「病気と向き合い夢に挑戦することで、同じような悩みを持つ人たちに希望を感じてもらえれば」と願っています。
起立性調節障害は、自律神経のバランスが崩れて血液の循環がうまくいかず、立ちくらみ、頭痛、朝起きられない、などの症状が出ます。怜奈さんは3年生の10月に発症。起き上がることができず、はうようにしか動けなくなりました。学校に行けず、1日のほとんどをベッドで過ごしていたといいます。「立つ、座る、寝る、起きるのも全部つらかった。そもそも生きるのがつらかった」と怜奈さんは振り返ります。
不安定な体調続く
通院して治療を模索する中、漢方薬局で処方された漢方薬の効果で体調は改善。4年生以降は、学校に週数回は登校できるようになりました。ただ、現在、体調は不安定な状態です。怜奈さん自身は、起立性調節障害について「誇りに思う」と前向きで「他の人は持っていないから経験値が増える」と考えています。
怜奈さんが米粉のお菓子作りを始めたのは5年生の時でした。発症後、胃腸が弱くなったため、消化が良い米粉に着目。作ったお菓子を家族や友人に贈って喜んでもらえると、うれしくなったといいます。今年4月、「将来の夢はお菓子屋さん」と言う怜奈さんに、弥生さんが「大人になる前に体験してみよう」と呼びかけ、挑戦することにしました。
8から∞(無限)を連想し「幸せが無限に続きますように」との怜奈さんの考えから、開業時期は8月に決めました。市内の米粉の料理教室に通ってレシピを習い、同じ品質で製造できるよう繰り返し試作。ごまやクランベリーなど味のアレンジも加え、試行錯誤しました。

店で製造、販売した米粉のスコーン
「作るのが楽しい」
開業準備に追われる中、調子が悪い日もありましたが、怜奈さんは「作るのが楽しいから」と諦めませんでした。開業に必要な作業や営業ノウハウについて、札幌商工会議所に相談。弥生さんは食品衛生責任者の資格を取得し、菓子製造業の許可があるレンタルキッチン「SUVACO」(札幌市南区川沿11の3)で8月から月1、2回、営業することにしました。
開業日は怜奈さんの妹、祖母、叔母も手伝い、午前7時から米粉のスコーン5種とドーナツ1種を製造。予約分も含め約190個を約5時間で完成させ、販売しました。アレルギーの子どもでも食べられる「体に優しいお菓子」にしたいと、スコーン生地には卵、バター、砂糖を使わず、メープルシロップや甘酒で甘みを出しています。「食べておいしいと共感してほしい」と怜奈さん。「スコーンの種類を増やしたいし、もっとたくさん作れるようにしたい」と目標を掲げています。
骨盤矯正サロンで働く弥生さんは元看護師で小児科での勤務経験があります。ブログとインスタグラムで「れなねこ日記」と題し、治療の経過などを発信してきました。「長く付き合う病気だが、学校や社会で理解されていない。私たちの活動を広く知ってほしい」。生きにくさを抱える子どものための学校開設が夢といいます。
営業日は怜奈さんの体調などを考えて決めます。9月は15日に平岸ハイヤー(札幌市豊平区平岸2の4)で開かれる「平岸マルシェ」に出店予定です。問い合わせは、公式ラインまたは、メール(yayoi.happylife527422@gmail.com)へ。
石崎医師に聞く 社会とのつながり大切

石崎優子医師
起立性調節障害について、治療法などを研究する関西医科大教授の石崎優子医師(小児心身医学)に聞きました。
起立した時に血液の巡り(循環)がうまくいかなくなり、様々な症状が出る小児の病気です。身長がぐっと伸びる成長期に発症することが多く、心理的要因も関係します。
治療は、規則正しい生活、睡眠、適度な運動、十分な水分補給をすることです。以前は2、3カ月で良くなるとされてきましたが、最近では長引くケースが増えています。発症によって不登校になり、運動量が減ってしまうと悪化することがあります。
病気とうまく付き合うことによって社会に適応することを目指します。病気だと諦めたり腫れ物扱いされたりして家にこもっていると、運動不足で症状を悪化させてしまいます。社会とつながりを持つことが大事です。
取材・文/石橋治佳(北海道新聞記者)
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