性教育の大切さ伝える講演活動 フリー助産師・中田知穂さん

なかた・ちほ 苫小牧出身。静岡県の医科大を卒業後、地元に戻って王子総合病院の助産師として11年間勤務し、2020年に退職。現在はフリーで性教育の講演をしたり、産前産後の母親を支援したりしている。夫、息子3人と5人暮らし。
性の知識に乏しい子どもが狙われる性犯罪が相次ぐ中、性教育の重要性はますます高まっている。苫小牧市は、性について学ぶ講演会を中学や高校などで毎年開き、市性教育人材バンクなどから講師を派遣している。その一人で、3人の息子を育てながら、フリーの助産師として性教育の講演活動を行う中田知穂さん(38)=苫小牧市=に、性教育の大切さや必要性について聞いた。
――保健師や看護師らを講師として登録する苫小牧市の性教育人材バンク(現在8人)のメンバーとして活動していますね。講演で大事にしていることは何ですか。
「小中高生に加え、教職員、一般市民を対象に、性教育に関する講演活動を行っています。月経・射精の仕組みから、性交と妊娠の関係、避妊方法や不妊について包括的に伝えることで、命の大切さや幸せの形を考えてもらうことを心掛けています。聴講者から『自分の知識が間違っていたことが分かった』『自分の体なのに知らないことがたくさんあった』といった声が寄せられています」
――性に関する知識を伝える取り組みを始めたきっかけは。
「大学在学中、講義で避妊具の使い方を具体的に学び、自分がいかに無知かショックを受けたことです。助産師として苫小牧市内の病院に勤務していた時、望まない妊娠に悩むお母さんにたくさん出会ったことも、性教育を広めたいとの思いを強めました。講演活動は病院勤務時代に、自治体からの依頼を引き受ける形で、始めました。フリーになった翌年の2021年に2回、22年に16回、今年は32回、講師に招かれました。性教育バンクを通じた依頼以外の仕事も増えてきました」
――性の知識がなかったり間違っていたりすると、どんなことが起こりますか。
「被害を被害と認識できない恐れがあります。代表例は、性的な目的で子どもに近づき手なずけるグルーミング行為。知識がない子どもが無自覚のまま性暴力を受け続ける事件が全国で相次いでいます。『水着で隠れる部分を人に見せたり触らせたりしたらだめ』ということを知るだけで、助けを求め、被害を防ぐことができます」
――小さい頃から性に関して学ぶことが大事ですね。
「知識は身を守る武器です。誤った知識も危険です。ある相談窓口に小学生の女の子から『男の子と手をつないでしまった。妊娠したかも』との声が寄せられました。周囲の大人が妊娠の仕組みについて『パパとママが仲良くしたら赤ちゃんができるんだよ』と伝えていたからです。誤解を招かない表現で伝えていく必要があります」
――性教育を進めていく中で、どんな課題や難しさがありますか。
「大人を中心に、性教育はいやらしいものだという先入観が根強いことです。性の知識を教育現場ではなく、アダルトビデオなどで得たからだと思います。道内のある小学校では教員の方針で生理を教えないところもあると聞きます。性教育は人生で自分らしい選択をするための人権教育です。正しい性教育を受けていないと子どもに教えるのは難しいので、大人にも積極的に学んでもらいたいです」
――今後の展望は。
「苫小牧市内で来春、出産を扱わない助産院の開業を目指しています。産前産後のお母さんたちをサポートしつつ、性の知識を広め、それを今度は自分の子どもに伝えてもらう。新しい助産院を足場に、そんな循環をつくっていきたいです」(聞き手・木村みなみ)
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