車に子ども、閉じ込み危険 夏は10分で35度 鍵の電池確認を

外気温32度で日なたに駐車した場合の車内温度の変化。白や赤に見えるフロントガラス付近が特に高温で、ダッシュボード付近は1時間で65度に達した
車の鍵とともに、子どもやペットを車内に残したままドアをロックして、外から開けられなくなる「閉じ込み」のトラブルが相次いでいる。真夏の炎天下では車内温度が急上昇する。昨年9月に静岡県内で認定こども園の通園バスに園児が取り残され死亡した事件が起きたように、車内に残されると熱中症などで命の危険を招く。日本自動車連盟(JAF)は、ドライバーにロック時の確認を慎重に行うよう求め、わずかな時間でも子どもやペットを車内に残したまま車を離れないように呼び掛けている。
「幼児が車内で泣いていました。母親は自分の上着で窓越しに日差しを遮り、名前を呼び続けていましたが、無事で良かった」。6月、札幌市内のスーパー駐車場で閉じ込みの救援に駆けつけたJAFのロードサービス隊員は、現場の緊迫した様子を振り返る。この日夕方、母親から救援依頼があり、隊員は約20分後に現場に到着した。外気温は約20度。車はエアコンが止まった状態で日なたに駐車し、解錠すると車内は蒸し暑かったという。
道内6月14件
JAF札幌支部によると、今年6月の閉じ込みによる道内の救援依頼件数は447件。このうち、車内に子どもが残されていたケースは14件、ペットは10件あった。命に関わる事案はなかった。件数は年間を通して同様のペースであり、危険の芽は常にある。
JAFの実験によると、外気温32度の時に窓を閉め切って日なたに駐車した場合、エンジン停止から10分で車内の温度は27度から35度に上昇した。20分たつと40度を超え、1時間後では43度を記録。直射日光でフロントガラスが熱せられ続け、急な車内温度の上昇につながったという。ハンドルは58度、ダッシュボード周辺は65度にもなり、触るとやけどをしかねない。
犬猫も要注意
また、外気温が35度の場合、気温や湿度などから熱中症の危険度を示す熱中症指数が、エアコン停止からわずか15分で危険レベルとなった。体温調節機能が十分に発達していない乳幼児や、全身で発汗して体温を下げることができない犬や猫は特に注意が必要だ。
一方、日陰に駐車した場合の車内温度は、10分で4度上昇し31度に。20分後には34度まで上がり、1時間後は36度となった。
スマホをダッシュボード付近に置いてカーナビ代わりに使う人は多いが、車内温度の上昇で電池が変形、破損し発火する恐れも。札幌支部事業課事業係長の安藤純一さん(49)は「駐車時にスマホを放置するのは大変危険」と強調する。
鍵の閉じ込みは機器の進歩も影響している。近年は、車に近づいたり離れたりするだけでドアを解錠・施錠できる「スマートキー」が多くなった。通常は車内に鍵があるとロックがかからない仕組みだが、鍵の電池が減っていると、車と鍵の通信状態が弱くなり、車内の鍵を認識できずにロックする場合がある。また、鍵のボタン操作でドアを解錠・施錠できる「キーレス」は、乳幼児が車内で触っているうちにロックがかかることもあり得る。トランクに荷物を出し入れし、鍵も一緒に入れたままトランクを閉めるケースもある。鍵は必ず携行するよう注意したい。
JAFでは、閉じ込みの救援依頼があった時点で、車内に子どもやペットがいないか確認している。救援に時間がかかるなど緊急性が高い場合は、救援依頼者に警察や消防にも相談するよう伝えているという。
スーパーの駐車場などでは、車の窓を少し開けてペットが残されているケースもあるが、安藤さんは「エアコンが稼働していても、何かの拍子にエンジンが止まるかもしれない。わずかな時間でも車内に残して車を離れないで」と話す。 (米山貴志)
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