• 感染妊婦の出産「判断ミスは人の死に直結。緊張の毎日」 「第4波」札幌の病院奮闘

    <寄り添う>酸素投与された感染妊婦(左)に 寄り添って病棟内を歩く看護師。患者は急激に症状が悪化することもあり、気が抜けない日々を送る(北大病院提供)
    新型コロナウイルスの感染者増加で、感染した妊婦を受け入れる医療現場が深刻な状況になっています。特に妊娠後期の感染は重症化リスクが高く、感染中の分娩(ぶんべん)となった場合は母子同時の感染対策が必要となり、対応できる施設は限られます。感染者が集中する札幌市内では「第4波」に入り、受け入れは“綱渡り”の状態となっています。コロナ下でのお産を取り巻く現状を取材しました。

    「どの時期に、どこに感染した妊婦を入院させるか、ベッド調整の判断ミスが間違いなく人の死に直結します。緊張の毎日です」。5月中旬、札幌市内の産科医療機関との間で感染妊婦の受け入れ調整などを担当する北大病院産科の馬詰武医師(40)は顔をこわばらせました。

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    感染中の分娩は北大と札医大のみ

    札幌市内で感染中の妊婦の分娩を扱えるのは、濃厚接触者となる生まれた赤ちゃんを陰圧室のある新生児集中治療室(NICU)で隔離できる、北大病院と札幌医大病院のみ。感染中の妊婦の早い時期のお産が複数重なれば、母親と赤ちゃんの病床確保が難しくなり、命に関わることも想定されます。

    道内ではウイルスの変異株が広がった4月下旬から感染者数が急増。特に感染者の多い札幌市は5月の連休以降、連日のように感染者数が200~300人台に。妊婦の感染についても「第4波は増えている」と市内で開業する複数の産科医らは口をそろえます。

    医療が逼迫(ひっぱく)する中、感染したり濃厚接触者となった妊婦の行き場がなくなるような状況を防ごうと、北大病院と札医大病院、開業医らでつくる産婦人科医会などは「周産期コロナ対策協議会」を4月に設立。市内や近郊の産科医療機関との連携を強化して、コロナ下でも安心してお産ができる体制を整備しました。

    産科病棟内で、感染妊婦のベッドを運ぶ看護師たち。防護具などフル着用のため、すぐ汗だくに(北大病院提供)
    <汗だく>産科病棟内で、感染妊婦のベッドを運ぶ看護師たち。防護具などフル着用のため、すぐ汗だくに(北大病院提供)

    これを受け、北大病院は昨年12月に産科病棟に独自に設けた妊婦専用のコロナ病床を5月下旬に増床。一般分娩を6月末まで休止し、感染妊婦の管理を集中的に行う対応に変更しました。札医大病院とともに感染中の妊婦のお産や重症例を主に引き受け、市内五つの中核病院は比較的軽症な感染妊婦を受け入れるようにしました。

    馬詰医師は「あらゆるケースを想定し、今まで以上に行政や他の医療機関との連携を密にして、可能な限り妊婦を受け入れていく覚悟です」と力を込めます。

    「原則帝王切開も」

    感染した妊婦の分娩は、通常と異なる対応が必要となる場合があります。日本産科婦人科学会などの指針では「感染拡大に応じ、施設によって原則帝王切開とすることもやむを得ない」としています。

    北大病院ではこれまで受け入れた感染妊婦計37人のうち、感染中に分娩したのは3人。いずれも帝王切 開で出産しました。赤ちゃんは全員陰性で、母親も回復しているといいます。札医大病院でも感染妊婦計9人のうち、2人が感染中に出産し、いずれも帝王切開でした(6月3日現在)。

    赤ちゃんと面会できない母親を気遣い、北大病院産科の看護師たちが赤ちゃんの日々の様子を記したNICUでの記録
    <気遣う>赤ちゃんと面会できない母親を気遣い、北大病院産科の看護師たちが赤ちゃんの日々の様子を記したNICUでの記録

    札医大病院の斎藤豪教授は「自然分娩はいきみなどで大量の飛沫(ひまつ)が出ます。医療者や新生児への感染リスクを排除できません」と説明します。産後は母親が陰性となるまで、赤ちゃんとは隔離され、対面はできません。

    日本産婦人科医会が昨年1~6月に感染が確認された妊婦のデータを解析したところ、56.9%が家庭内での感染でした。斎藤教授は「妊婦本人だけでなく、その家族も感染対策に努めてほしい」と話しています。

    取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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