• 2018/06/05

    通学かばん重過ぎる 教科書大型化、「置き勉」一部認める学校も

     小中高生の親から「子どもの通学かばんが重い」との声が聞こえてくる。脱「ゆとり教育」の流れで教科書のページ数が増える一方、教材を学校に置いて帰る「置き勉」は多くの学校で禁じられているためだ。子どもの体の発達などへの影響を指摘する声もある中、独自の対策を取る学校も出始めている。

     「見ていてかわいそうになる。家で毎日、全教科の勉強をするわけではないのに」。札幌市内の中学2年の女子生徒(13)の母親(50)はため息をつく。ある日のかばんの重さを量ると、8キロ。教科書とノートに加え、プリントをとじるファイルや資料集、ワークブックなど計19冊を背負って、学校までの片道25分の道のりを往復する。部活動をしている生徒はさらにジャージーや部活用具が加わり、計10~15キロになるケースも少なくない。

     教科書会社でつくる「教科書協会」(東京)によると、教科書の総ページ数は2002~16年度の14年間で中学校は54%増加(主要5教科)。小学校(同4教科)も02~15年度で58%増えた。脱「ゆとり教育」で学習内容が増え、「わかりやすさ」を重視しカラー化・大判化が進んだという。

     多くの学校では、家庭学習の奨励と、教材の盗難や破損を防ぐ安全管理上の観点から「置き勉」を禁じている。だが、専門家からは重い荷物を背負うと姿勢が悪くなったり、転倒した際の危険性が高まったりするとの指摘がある。米国の小児科学会は、子どもが持つ荷物の重さを体重の20%以下に抑えるよう提言。州によっては体重の10%以下とするよう規定している。道内の中学1年生の平均体重(17年度)は男子46・0キロ、女子44・7キロで、「体重の10%以下」とすると荷物の重さは男子が4・6キロ、女子が約4・5キロとなる。

     一部の学校では、子どもの負担を減らすための対策が始まっている。札幌市立啓明中(和田悦明校長)は今年4月、生徒と保護者に「教室に置いて良い教具」と記したA4判の紙を配布。実技教科の大半の教材と、社会の地図帳など計15~16冊と書写道具を置いて帰ることを認め、生徒たちは教室の後ろのカラーボックスに収納している。

     「かばんが重過ぎる」との保護者の声を受けて4年前から試行的に始め、本年度から現在の方法で統一。生徒には、教材や物を大切にすることをあらためて指導し、「盗難などのトラブルは聞こえていない」(小谷洋史主幹教諭)という。

     主要5教科の教材も学校に置くことを認める学校もある。広島市立中広(なかひろ)中は昨年9月から、個々人の棚に「置く物」と「持ち帰る物」の判断を生徒の自主性に委ねることにした。信頼関係の上で成り立つことなどを伝えて実施した結果、目立ったトラブルはなく、野沢久美校長は「『子どもの姿勢が良くなった』と好評。生徒には自分で考える力をつけてほしい」と話している。(酒谷信子)

    専門家に聞く 猫背や背骨傾く懸念

     通学かばんの重さは、子どもの発達に影響する可能性はあるのか。日本赤十字社医療センター(東京)の久野木順一・整形外科センター長に聞いた。

     重いかばんを長期間背負う影響について調べた論文は見当たりませんが、米国で平均11歳の子どもに4、8、12キロのバックパックをそれぞれ背負わせ、磁気共鳴画像装置(MRI)検査で腰椎への影響を調べた研究があります。

     分かったことは、バッグが重くなるほど《1》椎間板のつぶれ方が大きくなる《2》猫背気味になる《3》(腰痛などの)体の痛みが強くなる―という3点です。また、重さが8キロを超えると、半数の子どもの背骨が片側に10度以上傾くことも分かりました。両肩で背負っていても、体の癖が出てしまうためでしょう。

     子どもの骨の成長には適度な負荷が必要ですが、背骨が曲がるほどの過剰な負荷はいけません。椎間板への圧迫が大きいと、椎間板がすり減り、将来腰痛を発生するリスクが高まる可能性もあります。カバンの重さは、少なくとも体重の15%は超えないようにした方が良いでしょう。