• 2020/05/12

    公式!? 実は個人運営 フォロワー数5万超え 「函館災害情報」がシェアされるわけ

     「ツイッターの『函館災害情報』って誰がやっているの?」――。函館のツイッターユーザーなら一度はそう思ったことがあるはず。地震など災害情報に関する行政の発表、新聞やテレビの記事などを素早く速報するアカウント「函館災害情報」は、実は個人運営だ。新型コロナウイルスの情報発信にも力を入れ、フォロワーは4月末時点で5万人を超えた。運営する函館の会社員松居孝幸さん(39)は、どのように運営しているのだろうか。(函館報道部 西本紗保美、桶谷駿矢)


     松居さんは函館生まれの函館在住。取材は4月29日、北海道新聞函館支社内の会議室でマスク着用の上、換気をして行った。

    20歳だった2002年に立ち上げ。当時はメルマガ配信

    ※撮影時のみマスクを外しています
    ※撮影時のみマスクを外しています


     ――「函館災害情報」はどのような経緯で始めたのですか。

     「高校卒業後、函館市内の専門学校でパソコンやネット通信について学びました。テレビで地震についての番組を見たことがきっかけで、函館で大災害が起きたらどうなるんだろうと考え、卒業後の2002年7月に趣味として函館災害情報を立ち上げました。当時は登録者にメールで地震や台風、消防車の出動状況を知らせる『メールマガジン』とホームページ(HP)でしたが、2013年5月からツイッターで情報発信しています」

    素早いツイート、なぜ可能?「基本は1人で運営」

     ――地震が起きた際は、直後にツイートすることが多いですね。

     「スマホの機能で『●日●時●分に地震が発生しました』と自動でツイートを生成できるショートカットを用意してあります。自分が揺れを感じたら、すぐに投稿。地震発生から30秒ほどで最初のツイートが完了します。同時に『ウェザーニュース』のHPを開き、速報をシェアするので、だいたい5分以内で震源地や震度をツイートできます。基本は私1人ですが、仕事で手が離せない時などは知人2人ほどに頼んでいます」

    松居さんへの取材翌日の4月30日に函館で震度2の地震が発生。記者はすかさず函館災害情報を見たが、発生から1分以内にツイートしていた

    新型コロナウイルスの感染拡大で、4月にフォロワー5万人突破

     ――4月中に、フォロワー数が5万人を突破しましたね。

     「2月末に道による独自の緊急事態宣言が出てから、1カ月でフォロワー数が1月末比で1883人増えて4万8356人になりました。4月18日に5万人を突破。4月末現在の数字を見ると、約4200人フォロワーが増えた計算になります」

    道が緊急事態宣言を発令したことを伝える2月28日のツイート

    市民の不安がコメントに噴出…

     ――情報発信で気をつけていることや、基準はありますか。フォロワーのコメントには個人情報を示すものや、誹謗(ひぼう)中傷もあります。

     「公になっていない情報や不確かな情報は必ず検索し、消防署の発表やニュースで確認してから流します。世の中が不安に包まれている中、人を傷つけたり嫌な思いにさせたりするコメントはいかがなものかなと思います。あまりにひどいものはブロックすることもあります。ただ、コメント欄が市民の議論の場になるのは悪いことだは思いません」

     ――新型コロナ関係で印象に残っているツイートはありますか。

     「4月3日に函館市内の湯の川プリンスホテル渚亭が感染者の宿泊をFacebookで発表した際、フォロワーからの連絡を受けてツイートしたところ、多くの反響がありました。渚亭を応援するコメントだけでなく、従業員にPCR検査を受けさせなかった市立函館保健所への批判の声もありました」

    どうしん電子版掲載記事
    どうしん電子版掲載記事(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/410201


     ※市立函館保健所は北海道新聞の取材に「同ホテルの従業員は濃厚接触者とまではいえず、検査の対象外」と説明している。PCR検査については今後、函館市医師会が独自検査を目指す動きもある

    「公式アカウント」と間違えられ…「市も素早いネット配信を」

    「情報発信のため休みの日も常にスマホを手放せない」と語る松居さん
    「情報発信のため休みの日も常にスマホを手放せない」と語る松居さん


     ――市公式の情報発信については、どう思われますか。

     「4月22日に函館市職員の新型コロナ感染が発覚した際、市は記者会見から3時間後にメール配信し、ツイートはありませんでした。『感染者が出ました。詳細は後でお知らせします』という素早く短いツイートだけでも、ネットに頼る市民は安心できるはずです。最近はこちらが『函館市の公式アカウント』と勘違いされることが増えましたので、定期的に市の相談窓口についてツイートしています」

    民間企業からのマスク5万枚を道南の医療機関、介護施設などに橋渡し

     ――ツイッターの情報発信から、道南の医療機関などへのマスク寄贈につながりました。

     「埼玉県の三益貿易さんが格安の『10枚1円マスク』をオンライン販売していることを知り、ツイートしたことがきっかけです。計5万枚を受け取る予定で、4月7日には先行して5千枚を函館中央病院に届けました。今後残りのマスクも、道南の介護施設や医療機関、学童保育などに寄贈する予定です」

    4月7日、埼玉県の通販サイト運営会社・三益貿易からの寄贈マスクを函館中央病院に届けた時のツイート道が緊急事態宣言を発令したことを伝える2月28日のツイート

    「今後も地域の役立つ情報を届けたい」

     ――今後はどのように活動していきますか。

     「無償運営ですが、寄付用の口座もホームページに記載しており、そちらは災害時の支援物資寄贈などに役立てるつもりです。これからも素早いスピードで情報を届けたいです。たとえ情報量は少なくても、地域の情報が即座に発信されること自体が、市民の暮らしの安心につながると感じています」

    (2020年5月11日付 北海道新聞朝刊掲載記事を再編集しました)