• 2020/01/10

    多様な保育ないがしろ 「森のようちえん」幼保無償化対象外 認可外施設移行も独自性制限

     園舎を持たず、道内の自然そのものを教室とする野外保育「森のようちえん」が、昨年10月に始まった幼児教育・保育の無償化に揺れている。認可・無認可の幼稚園や保育園として認められるには園舎の保有などが大前提で、森のようちえんは無償化の対象外。一部は園舎を整備し、認可外保育施設に切り替える動きもあるが、設備負担など課題は山積する。関係者は「国の型にはまらない多様な保育が置き去りにされている」と漏らす。

     「見て、こんな大きな霜柱があったよ!」。昨年12月下旬、上川管内中富良野町の北星山森林公園。雪の下を観察していた3人の子どもが声を弾ませた。3人は、町内の森のようちえん「森のたね」の園児だ。

     森のたねは2007年、親子で参加する自主保育グループとして開設し、16年に専任保育士を置き預かり保育を始めた。利用料は月2万5千円で、1市2町の2~6歳計10人が通園。平日午前9時から午後4時まで、森の中で駆け回ったり植物や動物の足跡を観察したりする。代表の寺岡祐子さん(49)は「1日の過ごし方は子どもの考えに任せ、大人は口出しせず見守りに徹する。自然の中、子どもも大人も成長します」。

    道内に約20カ所

     園舎を持たず森の中で過ごす森のようちえんは、1950年代にデンマークで生まれた。森や川などの自然環境そのものを教室とし、柔軟性・独自性が強みだ。90年代ごろから国内でも広まり、恒常的に開設するのは現在、道内約20カ所を含め、全国100カ所に上る。

     昨年10月にスタートした幼保無償化は、認可保育所や幼稚園に通う子ども、認可外施設で保育が必要と認めれた子どもが対象で、園舎がなく、認可外施設にも当たらない森のようちえんは対象外。森のたねは昨年9月、5年以内に園舎を整備するなど一定の条件のもと認可外施設に移行した。

     だが、まだハードルがあった。認可外施設で無償となるのは共働きやひとり親など自治体が「保育の必要性」を認めた世帯のみ。森のたね利用者には対象外の家庭もあり、寺岡さんは「利用者間の平等が保てなくなった。自然保育ができる素晴らしい環境が整っているのに」とため息をつく。

     19人の園児が通う上川管内鷹栖町の森のようちえん「ぴっぱら」も無償化に備え認可外施設に移行した。ネット上で資金調達するクラウドファンディングも活用し、園舎建設に着手。松下理香子代表(58)は「国の方針が直前まで見えず振り回された」。無償化対象となるため新たに働き始めた母親も複数いるといい、「親子での参加も大切なのに、国の枠組みに合わせて無理に子どもを預けるのでは本末転倒」と指摘する。

    自由確保したい

     苫小牧市宮の森地区で活動する「青空自主保育 木(こ)もれ陽(び)の会」代表の松山道子さん(44)は、「認可外施設になると保育時間延長などを求められ、対応しきれなくなる可能性がある。無償でなくても、まずはこれまで通りの自由な取り組みを確保したい」と話す。

     森のようちえん全国ネットワーク連盟(東京)は昨年12月、無償化での平等を求め、緊急の署名活動を始めた。自然保育に詳しい「こども環境学会」の中島興世(こうせい)副会長(恵庭市)は「小中学生の体力低下が叫ばれる中、森のようちえんは子どもの知力、体力を高める切り札になる。国の子育て支援にも、評価の高さが反映されるべきだ」と話す。(岩崎あんり)