• 2019/09/06

    保育園災害時対応を模索 発生当日も6割開園 保育士の精神的負担増 心のケア学ぶ場必要 予算工夫して備蓄

    胆振東部地震の発生から1年。発生当初は停電からの復旧の見通しが立たず、幼稚園や学校の大半が早々に休園・休校を決めたが、保育園は工夫を重ねて開園するところが多かった。働く親の子どもを預かる児童福祉施設としての特性から、「簡単には休めない」というのが理由だ。ただ、災害時の保育士の精神的負担は大きく、子どもの心のケアや自分自身のストレスに向き合うための研修の充実を求める声もある。

     
     道内の小児科医や保育園長らでつくる北海道保育保健協議会(古田博文会長)は昨秋、全道の保育施設220カ所を対象に、胆振東部地震発生時の対応や子どもと保育士のストレスを調査した。

     地震発生当日は「通常通り開園」と「自宅で過ごすよう協力要請しながら開園」を合わせると、6割以上が開園した。札幌市清田区の認定こども園では、消防や医療関係者の子どもなど数人が登園した。園長は「献立を変更し、用意できる食材で昼食を提供した。(建物被害や断水がなく)停電だけなら、日中は何とか保育できると感じた」と言う。

     一方、休園したのは36.4%。札幌市東区のある保育園の園長は「揺れが大きかったので閉園したが、『保育園は閉じてはいけない』という考えも頭にあり、本当に悩んだ」と振り返る。「入り口の電気錠が停電で開かず、開園できなかった」という園もあった。

     地震後の保育士のストレスは大きかったようだ。発生当日から1週間に保育士が「緊張・動揺していた」と答えた施設は8割に達し、2~3カ月後でも3割に上った。震源地に近い胆振地方の保育園に勤める50代の女性保育士は「子どもの命を預かる立場なので、『もしも今大きな余震が来たら』『もしも冬場だったら』などと考え、不安が尽きなかった」と話す。

     協議会の吉木美恵副会長は「災害対応を学ぶ危機管理研修もあるが、参加経験のない人も多い。保育士が広く参加し、子どもの心のケアや自分自身のストレスとどう向き合うかを学ぶ場が必要」と指摘する。

     地震後、各園は「停電を想定し、マニュアルを見直した」「発電機や、備蓄品専用の物置を購入した」など対策を進めるが、予算不足に苦しむ施設もある。保育園は年15万円を上限に国から防災対策費用の給付を受けられるが、沿岸部のある保育園は「津波対策も想定しなければならず、園児の防災靴や帽子を毎年少しずつ購入している。発電機も買いたいが15万円ではとても足りない」と漏らす。

     地震による子どものストレスに関する調査項目では、3分の2の施設が「子どもに変化がみられた」と回答した。2~3歳の低年齢児は「身近な大人から離れない」「眠れなかったり、夜泣きをする」など比較的目に見える形で不安が現れたが、5歳児では「頭やおなかが痛い」「食欲がない」などの症状が目立った。結果を分析した藤女子大の吾田富士子教授(保育学)は「年齢が上がると、不安をストレートに出しにくくなる。より丁寧に様子を見てあげる必要がある」と言う。

     地震発生から1年の節目には、子どもがメディアなどで地震の情報に触れる機会が増える。吾田教授は「『去年の地震を踏まえて今はコレを備えているから、きっと大丈夫』などと声をかけると、子どもも安心して過ごしやすい」とアドバイスする。(酒谷信子)