シングルマザー 厳しい就労 子育てと両立、夜勤がない職場…希望満たす求人少なく

シングルマザー 厳しい就労 子育てと両立、夜勤がない職場…希望満たす求人少なく

子育て中の女性の就職相談に応じるマザーズ・キャリアカフェの個別ブース

人手不足などを背景に有効求人倍率が高い水準で推移する一方で、1人で子どもを育てるシングルマザーの就職は厳しい状況が続いている。子育てとの両立のため、夜勤や休日勤務がない仕事や、子どもの急病時などに休める職場を望むが、条件を満たす求人は少なく、希望する仕事と求人のミスマッチが生じている。シングルマザーの就労事情を探った。


「いい仕事が見つからない」。札幌市内の女性(45)は声を落とした。10年前に離婚し中学生の息子を育てながらパートで事務職を続ける。息子は不登校で、1日の大半を自宅で1人で過ごす。

職場は残業が多く、帰宅は毎日午後7時すぎだ。「息子が気になり、早く帰宅したいけれど、今の仕事では勤務時間が減ると生活できなくなる。安定した給料を得られる仕事を探しているが、なかなか見つからない」という。

別の札幌市内の女性(42)は精神疾患を患い療養中だ。生活保護を受けながら、小学生の息子と暮らす。回復したら正社員として働きたいが「子どもが病気になった時に、職場が臨機応変に休ませてくれるかどうか不安」と話す。

国勢調査によると、2015年の道内の母子世帯数(子どもが20歳未満)は4万5651で、20年前と比べて2割以上増加。道の17年のひとり親家庭生活実態調査ではシングルマザーの半数以上が非正規職で、年収も半数超が200万円未満だった。同調査で、仕事で不安なことについて質問したところ(複数回答)、「収入が少ない」と答えた人は51.1%で最も多かった。母子世帯の生活の厳しさの背景には、思うような仕事が見つからず、正規社員に比べ雇用や収入が安定していない非正規職で働かざるを得ないシングルマザーの事情があるようだ。

北海道労働局によると10月の道内の有効求人倍率(原数値)は1.21倍だが、うち正社員の有効求人倍率は0.86倍、事務職は0.39倍にとどまる。

母親の就職を支援する「マザーズハローワーク札幌」(札幌)には1カ月に30~40人のシングルマザーが求職の登録に訪れるが、職業相談第三部の奥村英生部長は「女性に人気の事務職は求人が少ない上に、正社員では残業ができる人を求める企業が多い」と話す。

札幌市ひとり親家庭支援センター(札幌)では、17年度に就職相談の登録をした210人のうち、就職できた人は約6割だ。同センターは「求人が多い介護職などは夜勤があったり車の運転が必須で、敬遠する人が多い」と説明する。

子育て中の女性の就労支援を行う道のマザーズ・キャリアカフェ(札幌)の臼田美奈子チーフ・キャリアアドバイザーは「シングルマザーを率先して採用する企業は少なく、仮に就職しても、子どもの学校行事や病気で休みたいと会社に言えず相談に来る人も多い」という。

ひとり親を支援している「しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道」(札幌)の平井照枝代表は「シングルマザーに対する企業の理解はまだまだ低く、母親と子どもとの生活を成り立たせるだけの収入を得るのは難しい」とした上で、「子育て中は、仕事を制限せざるを得ないかもしれないが、母親たちは子育てが終われば、企業の戦力になる。企業も人材不足が深刻化する中、雇用に対する考えを見直してほしい」と強調する。

取材・文/片山由紀(北海道新聞記者)

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