「ねぐせのしくみ」予想つかない展開好評 剣淵「絵本の里大賞」ヨシタケさん3年連続

けんぶち絵本の里大賞の「ねぐせのしくみ」(手前2冊)とびばからす賞の(左から)「パンどろぼう」「私の名前は宗谷本線」、アルパカ賞の「悲しみのゴリラ」

けんぶち絵本の里大賞の「ねぐせのしくみ」(手前2冊)とびばからす賞の(左から)「パンどろぼう」「私の名前は宗谷本線」、アルパカ賞の「悲しみのゴリラ」

【剣淵】1日に発表された第31回けんぶち絵本の里大賞(けんぶち絵本の里づくり実行委主催)に選ばれた「ねぐせのしくみ」(ブロンズ新社)の作者ヨシタケシンスケさん(48)。史上初めて3年連続での大賞に輝き、「毎回面白いと投票していただけていることがうれしい」と喜ぶ。次点のびばからす賞に選ばれた、コミカルなタッチの「パンどろぼう」(柴田ケイコ、KADOKAWA)と、地元ゆかりの「私の名前は宗谷本線」(文・荒尾美知子、絵・堀川真、あすなろ書房)の2作品も関係者から高く評価されている。

果てしない想像力が魅力

ねぐせのしくみは、寝ている女の子が正体不明の人々に連れ出されて奇想天外な出来事に遭遇する物語。同賞を創設した町民団体「けんぶち絵本の里を創ろう会」の鈴木千尋事務局長は「寝癖という誰にでもある現象をテーマにしながら、予想もつかない展開が読者を引き付けたのでは」とみる。

ヨシタケさんは2016年以来、計8作品で入賞。19年度の大賞作品となった「おしっこちょっぴりもれたろう」では、見た目には分からない悩みが誰にでもあると気づかせ、昨年度の「ころべばいいのに」では、嫌いな人に抱く嫌な気持ちとの向き合い方を描くなど、普遍的なテーマを扱う。鈴木さんは「大人も考えさせられる場面がある。果てしなく広がる想像力が魅力」と語った。

ヨ​シ​タ​ケ​シ​ン​ス​ケ​さ​ん​

ヨ​シ​タ​ケ​シ​ン​ス​ケ​さ​ん​

びばからす賞に選ばれた「パンどろぼう」は、食パンに手足と鼻が生えたユニークな主人公が、世界一おいしいパンを求めて事件を起こす物語。同会事務局員で、町絵本の館職員の渡辺一宝さん(25)は「キャラクターのデザインが独特で表情豊か。パンの中からパンどろぼうを探す場面もあり、子どもが絵で楽しめる」と評価した。

「私の名前―」は、1960年当時の国鉄宗谷線(現・JR宗谷線)沿線で暮らす子どもたちの姿を素朴な絵で描いた。町内の牛舎や防雪林も登場し、郷土の歴史に触れられる。同会初代会長で農業を営む高橋毅さん(74)は「今年3月で、町内の2駅を含む宗谷線の無人駅のいくつかが廃止されたこともあって、注目されたのでは」と指摘し、「われわれも宗谷線を中心に生活していたので懐かしさが感じられる。親子3世代で楽しめる」と話した。

このほか、新人賞にあたるアルパカ賞には、「悲しみのゴリラ」(文・ジャッキー・アズーア・クレイマー、絵・シンディ・ダービー、訳・落合恵子、クレヨンハウス)が選ばれた。

「どうでも良いこと丁寧に拾いたい」

3年連続4度目となる大賞受賞を果たしたヨシタケシンスケさんに、作品に込めた思いを聞いた。(宗万育美)

――受賞の感想は。

「いろいろなテーマで描いていますが、毎回面白いと投票していただけていることがうれしいです」

――「ねぐせのしくみ」はどういった構想から生まれたのですか。

「妻と2人の息子が、普通に寝ただけではそうはならないだろうというくらい寝癖がすごく、本当にベッドで寝ているだけなのかという疑問を本にしたいと考えました。毎日何時間も何が起きているのか分からない時間があるのは面白いと思います。作中では、女の子が寝ている間にどこかへ連れて行かれているのか、それともそういう夢を見ているのか、どっちとも取れるように描きました」

――過去の受賞作では、大人も共感するテーマを描かれています。

「いずれもよくある現象や感情など日常に転がっているものをテーマにしています。『ころべばいいのに』や『おしっこちょっぴりもれたろう』のように真剣に考えることと、本作のようにくだらないと思われることを同じ熱量で扱うことで、自分にとって大切なものは何か読者が考えるきっかけになればいいですね」

――今後の作品への意気込みは。

「今まで通り、どうでも良いと思われていることを一つ一つ丁寧に拾いたい。思春期の子や大人向けの本も作れたらと考えています」

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