臍帯血採取 道内12施設に

採取した臍帯血をバンクに送り届けるため専用のボックスに収める、札幌みらいクリニックの石渡瑞穂院長。提携開始から1カ月間で30本近くをバンクに提供したという

出産後の赤ちゃんのへそ(臍)の緒とお母さんの胎盤に含まれる血液「臍帯血(さいたいけつ)」を採取し、白血病をはじめとする血液疾患の患者の治療に用いる臍帯血移植。道内で、臍帯血を保存し移植を必要とする患者に提供するのが日本赤十字社北海道さい帯血バンク(札幌)だ。臍帯血の採取・提供に協力する産科施設が1カ所増えて、全道で計12カ所になった。

公的バンクが保存 患者に提供

産科・婦人科札幌みらいクリニック(札幌市清田区)が8月下旬から提携協力施設に加わった。石渡瑞穂院長は「以前からバンクに協力したいと考えていた。日々忙しいスタッフも賛同してくれた。妊婦さんに話すと予想以上に多くの方が温かく提供に協力してくださる。必要とする患者さんの治療に役立ててほしい。臍帯血の提供の輪がもっと広がってほしい」と話す。

バンクによると、移植用の臍帯血の採取は、説明を受けて同意が得られたお母さんから、赤ちゃんを出産した直後に無償で採取・提供してもらう。採取された臍帯血はバンクに運ばれ、さまざまな検査などを行い、基準を満たした血液だけが最長10年間凍結保存され、移植を希望する患者に提供される=図=。

臍帯血の採取から移植まで

ただし、採取した臍帯血は36時間以内に凍結保存しなければならないなどの制約があり、採取・提供に協力できるのはバンクと提携する協力施設で出産したお母さんに限られる。バンクの秋野光明担当部長は「出産が減っている中、今年になってから旭川市内の病院が分娩(ぶんべん)を休止し協力施設が一つ減っていただけに、とてもありがたい」と語る。

北海道さい帯血バンクは1997年2月から移植用の臍帯血の採取・保存を始めた。全国に6カ所ある公的臍帯血バンクの一つだ。2020年度は協力施設から1117本の臍帯血の提供を受け、うち、検査などを経て基準を満たした256本を保存した。この年度は、保存していた52本が道内をはじめ全国の患者に移植された。

いま、バンクが移植用に保存し、公表している臍帯血の数は915本、これまでに移植に用いられた臍帯血は累計で1462本に上る(いずれも21年8月末現在)。

臍帯血を採取・提供できる道内の産科施設

北海道さい帯血バンクのホームページ(https://www.bs.jrc.or.jp/hkd/hokkaido/special/m6_01_02_00_132.html)でも、臍帯血の提供やバンクについて詳しい情報を得られる。

幹細胞移植で血液造る力回復
白血病治療などに利用

臍帯血には血液を造る細胞(造血幹細胞)がたくさん含まれている。白血病などで血液を正常に造ることができない患者に、健康な人の造血幹細胞を移植し、血液を造る力を回復させ病気を治すことができる。

このような造血幹細胞移植には、臍帯血移植のほか、骨髄移植、末梢(まっしょう)血幹細胞移植がある。移植が必要な患者は、血縁者から白血球の型が合う骨髄や末梢血幹細胞の提供者を探す。見つからなければ臍帯血バンク(全国6カ所)や日本骨髄バンクで探すことになる。

臍帯血バンクは移植用の臍帯血を事前に採取し凍結保存している。一方、骨髄バンクはドナー登録者の中から患者に合う人を見つけ、それから移植用の骨髄または末梢血幹細胞を採取し提供を受ける。

こうした非血縁者間の造血幹細胞移植は2019年に日本で2622例行われた。臍帯血移植が全体の53%を占めている。

取材・文/岩本進(北海道新聞編集委員)

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