定額制「サブスク」子育て応援 時間と手間節約、物を減らした生活に

「トイサブ!」から届いた知育玩具に歓声を上げる女の子。おもちゃは専門家が成長に合わせて選んでいます

一定期間に定額で料金を支払うと、商品やサービスを継続的に利用できる「サブスクリプション(サブスク)」を、子育てに活用する人が増えています。育児関連のサブスクは玩具のレンタルが先駆けで、保育園でオムツが使い放題になるサービスやお下がり服の交換にも広がっています。専門家は「サービスが充実していけば、新たな子育て支援になる」と期待しています。

【オムツ】園で使い放題

「紙オムツ一枚一枚に名前を書いてこども園に届ける作業がなくなると、すごく楽です」

1歳半の息子を認定こども園に預ける札幌市の会社員女性(35)は、今月から紙オムツを園に届ける作業から解放されました。女性が利用する花山認定こども園が、紙オムツが使い放題となるサブスク「手ぶら登園」を導入したからです。保護者が月額3278円を払うと、メーカーがオムツとお尻ふきを必要な数だけ園に届けてくれるサービスです。

女性はこれまで、紙オムツを1日おきに15枚、園に届けてきました。園には毎日、着替えやエプロンなども持っていかなければなりませんい。出掛ける直前に慌ててオムツに名前を書いたり、時にはオムツを持参し忘れ、園に借りることもありました。

手ぶら登園のオムツは、園がまとめて保管して使うため、記名も不要。同園の0~1歳児30人の保護者のほとんどが、利用を希望しました。

手ぶら登園は、ユニ・チャーム(東京)と、保育士の人材サービス「BABY JOB」(大阪)が2019年に始めました。道内では、札幌市内の保育園など20園が今年4月に導入。函館、帯広などを含む計33園で利用できるようになりました。

手ぶら登園のオムツをストックする札幌市の花山認定こども園

手ぶら登園のオムツをストックする札幌市の花山認定こども園。3月までは、保護者が持参したオムツを、1人ぶんずつ引き出しに保管し使っていた

【玩具】成長に応じ提供

育児サブスクの先駆けで、根強い人気があるのが玩具のレンタルです。

札幌市の簗田まどかさん(33)は、知育玩具をレンタルするサブスク「トイサブ!」を利用しています。月額3674円(送料込み)払うと、玩具が2カ月交代で5~6種届くサービスです。簗田さん宅には3月下旬、ボタンをたたくとドラム音や動物の声が流れる玩具などが届き、生後11カ月の長女、紗良ちゃんを喜ばせました。

おもちゃは、運営会社「トラーナ」(東京)のプランナーが選んでいます。簗田さんは「成長に合ったおもちゃに次々と交換されるので娘が飽きず、荷物も増えない」と気に入っています。

トイサブ!は、2015年にスタートしました。コロナ禍の外出自粛で新規登録者が急増し、20年10月~21年1月は、前年同期の3倍に伸びました。

道内には、全国でも珍しい木のおもちゃのサブスクを提供する店があります。木の玩具専門店「おもちゃの森sapporo」(札幌)のサービスで利用料金は年間1万9800円(送料込み)。3カ月交代で4点ずつ玩具を貸し出しています。利用者の9割が道外在住です。

「おもちゃの森sapporo」から借りた木の玩具で遊ぶ子どもたち

「おもちゃの森sapporo」から借りた木の玩具で遊ぶ子どもたち。3カ月交代で入れ替わるので、飽きずに遊べる

【衣類】お下がりを交換

衣類のお下がりを交換できるサービスもあります。衣料品小売りアダストリア(東京)が運営する「キッズローブ」。月額1980円(送料込み、マンスリープラン)で、お下がりの服を月に最大8点もらうことができます。自分も提供するとポイントが付与され、服を譲り受けたい時に使えます。

育児関連のサブスクは近年、離乳食の購入や、育児グッズのレンタルなどさまざまなサービスが登場している。サブスクに詳しい茨城大の今村一真教授(49)=マーケティング論=は「物を減らして暮らしたい人や、時間を節約したい働く子育て世代に役立つはず。複数の業種が連携した育児サブスクのパッケージができれば、子育て支援の新たなインフラになる」と期待しています。

サブスクリプション市場

日本サブスクリプションビジネス振興会(東京)によると、インターネットによる映画や音楽配信を中心に2018年ごろから広がり、19年に月額制の家庭用ビールサーバーや、新車を定額支払いで利用できるサービスが注目され拡大しました。矢野経済研究所(東京)の調べでは、19年度の市場規模は約6835億3千万円。23年度には1兆円を超すと予測しています。市場は、ファッションレンタル、外食サービス、家電・家具、家事など多岐にわたっています。

気軽に契約トラブルも
解約方法、連絡先必ず確認を

サブスクリプションサービスの多くは、インターネットで気軽に契約できるため、トラブルも起きやすく、注意が必要です。

国民生活センターによると、サブスクの解約にかかわる消費相談は増加傾向にあり、玩具のレンタルについての相談もあります。相談内容は「届いた玩具が想像と違い、解約を申し込んだができなかった」「1カ月以内に遊ばなければ全額返金保証とうたっていたが、当月分と翌月分を請求された」「解約し玩具を返送したが、クレジットカードの請求が止まらない」など。

同センター相談情報部の玉木祐介さん(40)は「事業者が解約や返金に、さまざまな条件を付けていることが多く、契約前に必ず規約で確認を」と注意を促しています。また、あらかじめ、事業者の連絡先や連絡方法も確認するよう呼び掛けています。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

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