妊婦の孤立懸念 札幌市の訪問事業も教室も中止 再開めど立たず

出産を間近に控える札幌市内の女性。「気軽に話せる機会が大切」と話す

新型コロナウイルスの感染状況が収まらない中、妊婦の孤立が深まっている。札幌では感染が再拡大した昨年11月以降、市の保健師や助産師による妊婦への訪問事業が中止。母親教室も長期間中止が続き、いずれも再開のめどは立っていない。妊婦からは「外部との接点がほとんどなくなった」と嘆きも聞かれる。支援団体は「孤立しがちなコロナ禍だからこそ、手厚い支援が必要」と訴えている。

札幌では妊娠5、6カ月で初産の一般妊婦に、助産師や保健師の資格を持つ市の訪問指導員が家庭訪問を行っている。悩みを聞き、赤ちゃんを迎える準備への助言をする。妊娠期からつながり、出産後の女性のストレスなどを和らげて虐待などに至らないようにする効果も期待されるが、新型コロナの再拡大で、市は昨年11月12日から当面の中止を決めている。参加者同士で交流もできる各区の母親・両親教室も昨年3月以降は中止が続いている。

2月に第1子の出産を控える札幌の会社員女性(28)は夏に指導員の訪問を受けた。「初めてのことで分からないことばかり。何かあれば相談できる相手がいると分かり、安心できた」と話す。コロナの再拡大後は妊婦や子育て中の同世代との交流はほとんどなくなり「人と話す機会があまりに少なすぎる」。孤立感を感じた時期もあった。

お産を扱う各医療機関は各種教室を中止にしたり、対象を限定してオンラインで開催したりする。市保健所もオンラインで母親教室を昨年11月から2カ月に1回開催しているが、コロナ前より頻度は大幅に減っている。急な事業スタートで手探り状態のためだ。

希望する妊婦には市の保健師が訪問するといい、市保健所は「心配事があれば各区の保健センターに相談してほしい」と話す。ただ、1月下旬が予定日の札幌市の女性(34)は「何げない疑問や会話で情報交換できる環境が大事。相談はハードルが高い」と指摘する。

妊婦や親子を支援するため、希望する世帯への訪問サービスを夏から行っている子育て支援団体「NPO北海道ネウボラ」の五嶋絵里奈代表は「コロナ禍で孤立してしまう妊婦が多い今だからこそ、積極的かつ継続的につながる姿勢が必要だ」と指摘している。(高木緑)

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