• マタニティーフォト コロナ禍で人気

    旭川市内の雪原で家族一緒に出産前の姿を撮影した左から吉成千絵美さん、慎太郎さん、長男慶悟ちゃん(ハクベビー提供)
    新型コロナウイルスの感染拡大で出産時の立ち会いや入院中の面会が制限される中、パートナーや家族と一緒に妊娠中の自分の姿を「マタニティーフォト」として写真に残す女性が増えています。感染防止のために転院を強いられたケースもあり、妊娠期の写真が苦難を家族で乗り越え、命を育んだ記録となっています。

    家族と撮影 苦労の出産記録

    薄く日差しが差し込む窓辺で、妻の大きく膨らんだ腹部を夫の手が優しく包むー。国際協力機構(JICA)職員の村井博満さん(32)と妻の静さん(38)が昨年11月、札幌市清田区の写真スタジオ「リトルプラス」で撮影した写真の1枚。

    その後生まれた長男の怜ちゃんは間もなく2カ月。今は夫婦で育児に追われています。授乳やおむつ交換を終えると、部屋に飾った写真を2人で眺めて一息つくそう。「妻の大きなおなかを前に、やっとここまで来た、と胸がいっぱいになった思いを忘れないよう写真にしました」と博満さんは語ります。

    キルギスから退避した村井博満さん、静さん夫妻が出産前に札幌で撮影したマタニティーフォト(リトルプラス提供)

    中央アジア・キルギスの首都ビシュケクで勤務していた3月上旬、静さんが妊娠。現地はコロナの感染が急速に拡大し、静さんは外出を控え、家にこもる日々でした。6月に職場から国外退避を指示され、夫婦で紋別市にある静さんの実家に身を寄せることに。でもチャーター便の座席が確保できたのはほぼ1カ月後。安定期に入ったばかりの静さんは機内で腹部が張り、苦しさと不安で泣いたそうです。

    帰国後も2週間の自主隔離を経て紋別に着いたのは出発から約20日後。しかし初産婦を受け入れる産院がなく、11月に夫婦で出産のため札幌へ。異常分娩で怜ちゃんは仮死状態で生まれましたが、奇跡的に回復し今はすくすく育っています。「おなかの中で、この子もコロナの大変な状況をくぐり抜けた。必ずたくましい子に育つ」。静さんはふくらんだおなかの写真を見る度、そう思っています。

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    一緒に命育む重み記録

    リトルプラスは感染が広がった昨年3月以降、マタニティーフォトの撮影依頼が例年の4割増加。もともとは妊婦が単独で撮影するケースが中心でしたが、今はほとんどが夫や家族と一緒の写真を希望します。感染拡大で挙式を見送ったカップルも多く、撮影を担当する佐々木まさえさん(41)は「撮影中に感極まり涙する人が多いです。こんな時だから、夫婦や家族で一緒に命を育む重みを感じるのでは」と話します。

    看護師、保健師の資格を持つ大前より子さん(38)が主宰する上川管内東神楽町のフォトスタジオ「ハクベビー」も昨年、マタニティーフォトの依頼が前年から4割増えました。その多くが、旭川市内で出産を予定しながら、感染の急拡大により転院を強いられた妊婦や家族でした。

    上川管内幌加内町の農業吉成慎太郎さん(35)は12月初め、出産間近の妻千絵美さん(32)と長男慶悟ちゃん(1)と一緒に、旭川市内の雪原で撮影しました。

    千絵美さんは、出産のため通院していた旭川厚生病院で大規模クラスター(感染者集団)が発生したため旭川赤十字病院に転院。でも、赤十字病院でも入院患者が感染し旭川医大病院に再転院し、1度検診を受けただけの医大病院で12月22日に次男祥汰ちゃんを出産しました。家族の立ち会いや面会もできない状況でした。

    千絵美さんは「写真を見る度、慣れない病院で一人で乗り越えられるのか不安を抱えながらも出産できたことを思い出し、命を授かることは奇跡だと感じる。いつかこの経験を子どもたちに話したい」と言います。

    約100店が加盟する北海道写真館連合会によると、5年ほど前からマタニティーフォトは道内でも人気で、妊娠期から乳幼児期までを家族の記録として継続して撮影するサービスが増えているそうです。(佐竹直子)

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