• 母の子宮頸がんが子に移行 国立がん研など初解明 羊水に混入→出産時の吸入で肺にがん

    国立がん研究センターと北大病院などの研究チームは、産道を通って生まれた赤ちゃんが産声を上げた際、子宮頸(けい)がんの母親のがん細胞の混じった羊水を吸い込み、肺の中で小児がんが発症した現象を遺伝子の解析で発見した。母親から、がん細胞を含む羊水を吸い込んだ子へ、がんが移行するのは極めてまれで、症例の報告は世界初という。

    米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」オンライン版で7日、発表した。

    研究チームによると、日本人の男児2人。1例目の男児は1歳11カ月で左右の肺に多数のがんを発見。母親は出産3カ月後に子宮頸がんと診断されていた。2例目の男児は6歳で左肺に1カ所のがんが見つかった。母親は子宮頸部にしこりがあったが良性ポリープと考えていた。出産後に子宮頸がんと分かった。

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    研究チームは、同センターが開発した114個のがん関連遺伝子の異常を一度で調べるがん遺伝子パネル検査で、男児のがんの組織に他人の遺伝子の配列を発見。さらに母親のがんを解析すると、男児のがんの遺伝子の配列と同じだった。また、母と男児のがんから、子宮頸がんの原因となった同じ型のヒトパピローマウイルスの遺伝子も検出された。これらの結果から、男児の肺のがんは母親の子宮頸がんが移行し発症したと結論づけた。

    肺の小児がんは100万人に1人未満と非常に少ないうえ、羊水吸入による肺へのがん移行は「偶然2例見つかったが極めてまれな例」という。通常、他人のがん細胞が体内に移って発症することはないが、新生児で免疫の仕組みが十分確立していないことや、母親由来のがん細胞で全くの異物ではなかったことから、肺の中でがんになったと推測している。

    胎盤を通る血液を通して母親のがん細胞が子どもの臓器に移行した例は、世界で18例報告されている。

    1例目の男児は免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(製品名オプジーボ)の投与でがんはほぼ消失。2例目の男児は手術で切除した。

    同センター中央病院小児腫瘍科の小川千登世(ちとせ)科長と荒川歩(あゆむ)医長は「母親の子宮頸がんの発症予防が、子どもへのがんの移行を防ぐことにもつながる」などと指摘。共同研究者の北大病院小児科の真部淳(まなべあつし)教授は「遺伝子情報に基づく、がんゲノム医療の成果だ」と話す。

    取材・文/岩本進(北海道新聞 編集委員)

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