• 分娩綱渡り 2病院休止→妊婦30人が転院2回 旭川

    旭川市内の分娩の3分の1近くを担ってきた旭川厚生病院。クラスター発生で分娩を休止し、周産期医療に影響が広がっている

    【旭川】新型コロナウイルスの感染急拡大が旭川市内の周産期医療を圧迫している。中核の一つを担ってきた旭川厚生病院は11月下旬から大規模クラスター(感染者集団)の発生で、旭川赤十字病院も今月に入って入院患者が感染し、それぞれ分娩(ぶんべん)を休止した。厚生から赤十字、さらに別の病院へと病院が2回変わった妊婦も約30人おり、不安が広がる。受け皿となった市立旭川病院や旭川医大病院など他病院は負担が急増する中、道北の周産期医療を維持しようと必死の取り組みを続けている。

    「出産前に急に病院が変わって不安です」。旭川市内の「助産院あゆる」の北田恵美院長は11月、厚生病院から他院に変更を余儀なくされた妊婦から、涙声の電話を受けた。北田院長は「きょうにも陣痛が来るかもしれない中で病院を変えるのは不安。わらをもつかむ思いだったのでは」と思いやった。

    旭川市内の分娩は年間約2900件。八つの病院が上川管内に加え、深川市など北空知の妊婦を受け入れてきた。このうち厚生病院は2番目に多い約800件の分娩を担ってきたが、11月22日のクラスター確認を受け、予定されていた80人近くの分娩を中止。赤十字と医大、市立の3病院に引き受けてもらった。

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    今月8日、今度は赤十字の産婦人科で入院患者の感染が判明した。同科医師らが濃厚接触者となったため分娩を休止。検査の結果、感染の広がりはなかったとして経過観察を経て22日に再開する予定だが、出産間近の約40人は医大と市立に受け入れてもらった。うち約30人は厚生から移されたばかりで、病院変更は2度に及んだ。市立旭川病院産婦人科の伊野善彦医師は「一番かわいそうなのは妊婦さんだ。転院するたびにPCR検査を受けなければならず、心身ともに負担になっている」と案じた。

    その市立病院も「ただでさえ人手が不足する中、平時の3倍以上の分娩に対応しなければならない」(伊野医師)と必死だ。12月の分娩は予定していた10件に、厚生の20件と赤十字の7件が加わった。産婦人科は医師3人、助産師11人だが、新型コロナ患者が急増する中、助産師の一部は院内の感染者病棟に回さざるをえず、分娩は綱渡りだ。

    新生児集中治療室(NICU)がある旭川医大病院も厚生から切迫早産などリスクの高い分娩20件を受け入れ、赤十字の10件も担当。12月の分娩は少なくとも前月の1.5倍の50件になる。分娩が重なる場合に備え、産科以外の病棟にも妊産婦用ベッドを確保する方針で、助産師らスタッフもかき集めている。古川博之病院長は「厚生病院の分娩正常化は早くても来年1月末だろう。それまでは妊婦の不安を取り除けるよう力を入れたい」と強調する。

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    一方、病院間の協議で厚生と赤十字の妊婦を振り分ける際、両病院への通院回数が多いなど感染リスクの高い妊婦は、年間約千件と市内で最も分娩が多い森産科婦人科病院には割り当てなかった。万が一、同病院で感染者が出て分娩休止となれば、上川管内の周産期医療が崩壊するためだ。同病院は「職員には私生活でも行動を自粛するよう呼び掛けている。現場の医師らは感染者を絶対に出さないという緊張状態の中で診療している」と細心の注意を払っていると明かす。

    市立の伊野医師も「分娩を扱う病院でこれ以上の感染者が出たら共倒れだ。今は感染者を一人も出さずに分娩に集中したい」と祈るように話した。(若林彩、高田かすみ、山中いずみ)

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