• <伸びゆく君へ> 世間の「普通」に疑問を持って LGBTコミュニティ江戸川代表・七崎良輔さん

    男性同性愛者(ゲイ)であることを公表し、市民団体「LGBTコミュニティ江戸川」の代表として、LGBT(性的少数者)の理解を広げる活動に力を入れる。東京都内でパートナーと犬と生活。2019年に、パートナーに出会うまでの思いをつづった手記「僕が夫に出会うまで」(文芸春秋)を刊行した。

    新型コロナウイルスの影響で、講演会やコミュニティのイベントは少なくなってしまいましたが、今は文芸誌にコラムを書いたり、LGBT関連の情報をラジオで発信したりしています。休日には夫とドッグランに行くなど、楽しい日々を送っています。

    札幌で幼少期から高校まで過ごした。小中学校では、話し方や走り方が「女っぽい」ことでいじめられたが、耐えられた。それよりも、周囲の大人の言動に傷ついてきた。

    自分でも、なぜ自分がこうなのか分かりませんでした。学校には好きな男の子がいたので通っていましたが、「オカマ」と呼ばれるのはもちろん、殴られる、蹴られる、ペンを体に刺されるといったいじめは日常茶飯事。当時の先生方には「おまえが男らしくしていないからだ」「ぶりっ子をやめれば、いじめられない」「そのまま大人になったら困るよ」と言われていました。自分は変なんだ、自分を理解してくれる人は誰もいないんだ、と思わされました。高校では友人もできましたが、気持ちを周りに言うことはできませんでした。

    小学校1年生の時
    <あのころ> 小学校1年生の時。自宅のベランダで撮影した一枚です。当時、小学校では走り方やしぐさが女性的だとして、直すよう言われていました。アニメの「美少女戦士セーラームーン」が大好きだったのですが、それを周囲に言うことはありませんでした。

    誰も知らない土地に行きたいという気持ちもあり、高校卒業後は上京。専門学校に通った。東京でも異性愛者の男性に恋しては打ち明けられずに失恋を繰り返した。東京に出て2年目の秋、自分が同性愛者だと自分の中で認めた。

    何度も同じ苦しさを味わい、傷つくことに疲れ、自分で自分のことをもう認めなくてはならない、という時が来たのだと思います。それまでは「いつか女性を好きになれる日が来る」「つらいのは今だけだ」と自分に言い聞かせることができましたが、それができなくなった。自分で同性愛者だと認めた瞬間、「自分は一生一人で生きていくんだ」と思い、絶望を感じました。

    その数日後、専門学校の女友達が、失恋したと聞いた。飲みに誘って慰めていたが、出て行った彼氏の愚痴を言う友人の話を聞いてつい、こう言ってしまった。「そんなの全然、かわいそうじゃない。ぜいたくだ!」

    好きな人を堂々と好きだと言えて、付き合えていたことはぜいたくだ。僕はずっと男性の友達が好きで、片思いばかりなんだから、グチグチ言うなよ!って、言ってしまったんです。失敗した。友達を失った…と思いましたが、その友達は一瞬ぽかんとしてから、「それは、つらかったね」と言ってくれたんです。その言葉を聞いて、泣いてしまいました。理解してくれる人がいるんだと、初めて分かった瞬間でした。

    その後は、徐々に自分のことを周りに伝えられるようになった。16年には夫と結婚式を挙げた。これまでの人生、心の中にはいつも「反骨心」があったという。

    世間で「当たり前」や「普通」と言われていることは本当にそうなのだろうかと、疑問を持つことが大切だと思っています。多数派が全て正しいのか。周りの大人が言うことは絶対に正しいのか。情報化社会の今だからこそ、若い人たちは知識を持ち、さまざまなことを自分で判断してほしいと思います。大人には「周りに当事者がいるかもしれない」という想像力を持ってほしい。悩んでいる子どもたちには、私みたいな大人もいるよ、と伝わったらうれしいです。(聞き手・北海道新聞記者 鹿内朗代)

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    PROFILE
    ななさき・りょうすけ

    1987年11月、札幌市生まれ。札幌丘珠高卒業後、上京。専門学校卒業後は会社員を経て、2015年に「LGBTコミュニティ江戸川」(東京)を立ち上げ。16年にウエディングプランニング会社「合同会社Juerias LGBT Wedding」を設立した。夫との結婚式は築地本願寺で挙げた。19年4月、東京・江戸川区の同性パートナーシップ証明制度の第1号となった。(国政崇撮影)


    ◎ 道内ゆかりの著名人が自身の学びを交えながら、応援メッセージを送る「伸びゆく君へ」は毎月1回、北海道新聞朝刊に掲載しています。

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