新型コロナ 障害児に休校ストレス 変化に敏感、不安強くパニック

新型コロナウイルスの感染拡大で、道内の学校は約3カ月にわたって休校した。6月に再開したが、特別支援教育を受ける障害のある児童生徒の中には、長期休校による心身への影響があった子もいる。障害のある子は特に環境の変化に敏感で、生活リズムの乱れだけでなく、自傷やパニックなどを起こすケースがある。親や特別支援教育の関係者は「再び感染が広がり、休校によりまた環境が変わったら」と不安を隠せない。

保護者の負担増 ケア急務

「休校の理由や、その状況が理解できないか、見通しが持てないため、物をたたいたり自傷したりすることもあった」。そう話すのは、札幌市内の特別支援学校に通う知的障害のある中学2年の長男がいる女性。学校に行けない状況が長期間続き、「初めてのことでどうしていいか困った。外出自粛のため近所の公園に行くこともほぼできなかった」という。学校が再開してからは少し精神的に落ち着いたものの、「『コロナが怖い』と外出は嫌がる。いつ元通りになるのか…」

北海道教育委員会によると道内の特別支援学校は75校で約6千人、小中学校に設置された特別支援学級には約1万5千人が通う。緊急事態宣言中は、小中高校、特別支援学校ともに一斉休校となった。

知的障害や自閉症などがある子どもにとって、学校は学びの場だけではなく、通学自体が生活の一部になっている。暮らしの変化や不安などを伝えられず、自分や他人を傷つけたり物を壊したりする強度行動障害のある子どもの場合、外出自粛や休校は、大きなストレスになることが多い。自閉傾向がある小学4年の男児の母は「ストレス解消になるかと思って近所の公園を散歩したら、『学校じゃないから』と、余計パニックになった」と振り返る。

障害のある子どものいる親らでつくる北海道手をつなぐ育成会や北海道自閉症協会、北海道小鳩会など5団体は4月末から5月上旬にかけて、保護者の声=表=を聞いて集約した。5月中旬、この声も添え、子どもたちへのメンタル面のケアや支援などを求める要望書を道と道教委に提出した。手をつなぐ育成会の佐藤春光会長は「感染防止のための一律休校は仕方ない面もある。ただ、本人や家族たちの声を生かし、どう支えるかという視点で考えてほしかった」と話す。

保護者からは、不眠や過眠、運動不足、食欲不振、肥満など生活リズムの乱れなどを訴える声が多かった。勉強のためタブレットなどデジタル機器を使うことが多くなったことで、てんかん発作が増えたのではという親もいた。

このほか、学校に対して休校中にグラウンドや空き教室などの開放を求める要望もあり、学校ごとに対応が異なっていたという声も。これに対し道教委は「学校ごとに障害の種類が違い、寄宿舎がある学校もある。一律の対応は難しい」と説明する。

札幌市内の知的障害のある高校3年の男子生徒は、分散登校の際に通学に往復約2時間かけ、学校での滞在は1時間ほどだった。生徒の母親は「学校での時間が短すぎた。子どもは感染リスクに神経質になっていたのに…」と困惑する。

「新型コロナにより、学びの場のほか発達の場として、学校の重要性を際立たせた」。そう指摘するのは、特別支援教育に詳しい札幌学院大の二通諭名誉教授。学校は再開されたが、本人だけではなく、保護者やきょうだいなど周囲の負担にも目を向ける必要性を訴える。「障害の異なる親の会が協力して声を上げたのは珍しく貴重。再び一律休校になる事態を想定し、どう個別対応していくかを考える機会にしなければいけない」と話している。

取材・文/末角仁(北海道新聞記者)

この記事に関連するタグ

Ranking

  • すべて
  • 子育て・教育
2024
4/25
THU

Area

北海道外

その他