着床前診断道内4施設で 臨床研究開始 5月までに18人

体外受精した受精卵に染色体の数の異常がないかを調べて子宮に戻す「着床前診断(PGT-A)」について、道内の4医療施設が臨床研究を始めたことがわかった。5月末までに計18人が受けた。日本産科婦人科学会(日産婦)が進めている同研究は、不妊治療の成功率の向上につながるかを検証するのが目的。今年から本格的に始まり、2021年末までに登録した患者を数千人規模で調べる。


臨床研究は、治療実績など日産婦による一定の基準を満たした登録施設のみが参加できる。道内の実施施設は札幌医大病院、斗南病院、神谷レディースクリニック、さっぽろアートクリニック(いずれも札幌)の4施設で、いずれも5月までに患者の受け付けを始めた。これまでに4施設合わせて患者計18人に検査を実施、10人以上が実施を予定しているという。

受精卵の染色体の異常は不妊や流産の一因とされる。通常の不妊治療では、体外受精した受精卵を見た目で評価するが、「着床前スクリーニング」とも呼ばれるこの検査は、受精卵から一部の細胞を取り出し、すべての染色体の数の異常を調べて異常のないものを子宮に移植する。

着床前診断の流れ

検査対象は《1》体外受精に2回以上連続して失敗《2》流産を2回以上経験《3》夫婦どちらかに染色体の構造異常がある―のいずれかに当てはまるカップル。費用は患者負担で、検査は受精卵(胚盤胞)一つあたり5万円程度。保険適用外。

3年前に先行して実施した道外4医療施設による臨床研究では、「症例数が少なく」(日産婦)、流産率低下につながるかなどの効果がわからなかった。今回は実施施設を全国で100施設程度に増やし、35~42歳に限っていた年齢制限を撤廃するなど対象条件を大幅に緩和して実施する。昨年8月の理事会で計画を承認したが、新型コロナウイルスの影響などで各施設での開始が遅れた。

着床前診断を巡っては、期待を寄せる患者がいる一方、カップルに自然妊娠する能力があっても体外受精が必要になることや、受精卵の段階で異常がないか調べることへの生命倫理的な問題が指摘されている。札幌医大産婦人科学講座の斎藤豪教授は「不妊治療に悩む夫婦の選択肢の一つとして提供したい」と話している。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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