• 良質な幼児教育 どこでも 道教委「推進センター」開設1年

    「オンディマンド教材」の動画の一場面。幼児教育施設が都合の良い時間に効率よく研修できるよう制作した
    北海道教育委員会(道教委)が「北海道幼児教育推進センター」を開設してから、6月で1年となる。道と一体となり、広い道内のいずれの地域でも質の高い幼児教育を提供できるよう、市町村や幼児教育施設などを対象に研修、情報提供といった事業を行ってきた。4月からはインターネット上で研修教材の配信を開始。折しも新型コロナウイルスの感染拡大で集合研修の開催が難しくなっており、一層充実させていく方針だ。

    集合研修難しく ネットで教材配信 充実へ

    幼稚園の5歳児クラスの様子が画面に映し出される。ある男児が、取り組んだ遊びについて感想などを発表する「振り返り」の最中、急に歌を歌いだした。他の幼児も加わって合唱に。先生は止めず、歌い終わったところで「みんなで歌いたかったの? 先生、ピアノ練習してくるから待ってて」と話しかけた。

    ここでナレーション。「子どもの気持ちを大切にする保育者の言葉がけが、振り返りの時間では大切なようです」と指摘した。

    同センターが、札幌市幼児教育センターと北海道国公立幼稚園・こども園長会の協力を得て制作した「オンディマンド研修教材」の動画の一こまだ。道教委のホームページを通じて配信され、専用のIDとパスワードを入力すると視聴できる。

    人口が分散している道内では、約50の自治体で保育所などの幼児教育施設が1カ所しかない。これらの施設では他施設と意見交換する機会が限られており、教育、保育の充実には保育者らの研修が大切となる。その手助けをしようと、同センターは公開保育の代替として「オンディマンド研修教材」の配信を始めた。

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    これまでに配信された動画は4本。研修用ワークシートなども付いている。保育園、幼稚園などはシフト勤務、預かり保育などで多忙のため、子どもたちの昼寝の時間を利用して、30分ほどで研修が実施できるつくりになっている。同センターは「新型コロナウイルスの感染拡大で会場に集まって研修を開くことが難しくなっている。今後もオンディマンド研修の充実を図っていきたい」とする。

    道と道教委は2018年、幼児教育を担う人材の確保や「幼小連携」などの基本的な方向を示した「道幼児教育振興基本方針」を策定。これに基づき、同センターは19年6月に設置された。集合研修は各地の施設から参加しやすいよう、札幌、旭川などの都市部だけではなく14管内ごとの開催をスタートさせ、幼児教育と小学校教育を円滑につなごうと、小学校の教員も参加する「幼児教育を語る会」も14管内全てで開いた。

    今後は各教育施設が実践している好事例などの情報を発信していく方針。本年度は、委嘱した幼児教育相談員を幼稚園、保育園に派遣し、園内研修の充実や課題解決に関わってもらう事業にも力を入れる。

    日高管内えりも町の光の園幼稚園の川村文子副園長は「管内ごとの研修は普段の保育が終わってからでも参加しやすい。小学校の先生と同じ会議に出席したことで、幼稚園と小学校の教育の接続についてお互い理解しやすくもなった。ゆくゆくは相談員の派遣も利用してみたい」と話す。

    良い取り組み 共有を 平野・札幌国際短大学長

    札幌国際短大学長で、北海道幼児教育推進センターのスーパーバイザーを務める平野良明氏(専門は幼児教育政策)にセンターの役割などを聞いた。

    平野良明さん
    平野良明さん

    行政の制度上、福祉と教育に分かれている幼児教育の横のつながりを密にし、道内のどの幼児教育施設に通っていても豊かに育つことができるよう、各施設に情報提供や研修を行うことがセンターに求められている。

    センターは4月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために家で過ごす保護者と幼児に向けて「幼児の遊び応援サイト」を設けた。さまざまな幼稚園が、歌や踊りの指導、工作などそれぞれの取り組みを投稿している。他の施設にも見てくださいというメッセージが感じられ、センターが各幼児教育施設をつなぐ機能を果たしていることの表れだろう。

    楽しい遊びの中で五感を通して興味や意欲を引き出す良質の幼児教育は、その後に、主体的・対話的で深い学びに結びつく。良い体験を提供している教育施設を励まし、その内容を他の施設が共有できるようにしてほしい。センターはそれぞれの教育施設の課題と向き合って役割を整理し、適切な助言をできる体制をつくり機能を果たしていってもらいたい。

    取材・文/嘉指博行(北海道新聞記者)

    北海道新聞朝刊 教育面で毎週月曜日に掲載
    2020年度に大きく変わる大学入試制度や、新学習指導要領など教育の今について、その背景や影響を深く掘り下げ、子どもや保護者が知りたい情報を、分かりやすくお伝えしています。また、未来を生きる子どもの「生きる力」となる学びや学校生活について、子どもの視点で一緒に考えます。

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