新生児マススクリーニング 公費で先天性26疾患検査

新生児マススクリーニングは、赤ちゃんの血液をろ紙に染み込ませて検査する。札幌市衛星研究所の検査数は年間1万5千件になる

新生児マススクリーニングは、赤ちゃんの血液をろ紙に染み込ませて検査する。札幌市衛星研究所の検査数は年間1万5千件になる

生まれたばかりの赤ちゃんの血液を調べ、先天性の病気を早期に発見する「新生児マススクリーニング」。道内では計26種類の病気を対象に、原則すべての赤ちゃんに公費で行われており、効果も出ています。一方、天使病院(札幌市東区)は、公費負担の検査に含まれない7種類の病気を調べる任意検査を実施しています。道内では唯一の取り組みで、1月からは他院で生まれた赤ちゃんも試験的に受け入れを始めました。

早期発見、発症予防に力

「対象はまれな病気。でも、とにかく病気を早期に見つけることが重要なんです」。札幌市衛生研究所(白石区)で新生児マススクリーニングを担当する野町祥介係長はこう強調します。

対象の26種類=表=は、ホルモンの分泌異常やアミノ酸・糖の代謝異常、エネルギーを作る過程がうまく働かないことで引き起こされる病気で、多くは数万人から数十万人に一人の割合の希少な疾患。札幌市は全国の自治体の中でも最も早い2005年から現在の「タンデムマス」という検査法を採用し、早期発見・発症予防に力を入れてきました。

野町さんは「特殊なミルクを使ったり、食事など日常生活に気をつけるだけで発症を防げる例もある。病気を理解して、適切に対処すれば、障害のリスクを大幅に減らすことができる」と検査の意義を訴えます。

新生児マススクリーニングは生後4~6日の赤ちゃんのかかとから少量の血液を採って、ろ紙に染み込ませ、血液中の化学物質を検査施設で測定、病気の可能性を調べます。検査施設は、札幌市内で出産した場合は同研究所、札幌市以外の道内で出産した場合は北海道薬剤師会公衆衛生検査センター(豊平区)が担っています。

病気が疑われた場合は、専門の医療機関で精密検査を行います。18年度は道内で3万3431人が検査を受け、33人が患者として診断され、早期に適切な治療につながっています。遺伝に関わる病気のため、赤ちゃんの家族の病気もわかり、治療を始めたケースもあるといいます。

札幌・天使病院 7種の任意検査も

天使病院が実施する任意検査は、新生児マススクリーニングの対象になっていない7種類の病気の可能性について調べます。昨年4月から、同院で生まれた赤ちゃんを対象に、希望者に検査を実施してきましたが、1月からは他院で生まれた生後30日未満の赤ちゃんも予約制で受けています。ただ、現在は試験運用のため、受けられる予約枠は数件に限られます。4月以降は若干広げる見通しといいます。

7種類の病気は国の指定難病で、ムコ多糖症Ⅰ型、同Ⅱ型、同ⅣA型、同Ⅵ型、ファブリー病、ポンペ病、重症複合免疫不全症。いずれも非常にまれな病気で、日本全国での総患者数は約1500人といいます。検査は新生児マススクリーニングでかかとから血を採る時に、同時にろ紙に採血します。同検査を実施しているのは天使病院を含め全国20施設(昨年12月現在)といいます。

担当する外木秀文臨床遺伝センター長(小児科)は「小児の病気の中には成長するにつれて重い障害が明らかになる病気がある。現在もそのような病気を対象に新生児マススクリーニングが行われているが、早期診断・治療が有効な病気はそれだけではない」と指摘。「試験運用のため受けられる数は限定的ではあるが、任意検査で対象とする病気は近年、治療法も確立されており、診断が早ければ、より患者の生活の質の向上につながる」と話しています。任意検査は保険適用外で1万5千円(税別)。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

新生児マススクリーニング

1977年、すべての赤ちゃんを対象に各都道府県、政令指定都市の公費負担で始まった。知らずに放置すると、命に関わる障害につながる可能性がある先天的な病気を、発症していない新生児期に発見し、発症予防や適切な治療に結びつけるのが目的。

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