広げようPTA考える輪(下)フォーラム実行委呼びかけ人・堀内京子さん(朝日新聞記者)インタビュー

5、8月の2回のフォーラムは全国7紙の新聞記者たちによる実行委が主催し、企画しました。なぜこのようなイベントを開こうと考えたのでしょうか。実行委呼びかけ人で朝日新聞経済部記者の堀内京子さんに話を聞きました。(聞き手・北海道新聞記者 片山由紀)

Q フォーラムを開いたきっかけは何ですか。

2012年から同僚たちと「入退会自由の原則」や「会費の使われ方」「非会員の扱われ方」などPTA関連の記事を書いてきました。でも記事を書いても書いても、毎年同じような悩みの手紙やメールが読者から届く。

PTA問題で悩む人が減らない理由を探るうちに、見えてきたことがあります。それは①会員や役員は1年単位で入れ替わるため、PTA問題の当事者性が持続しない ②PTAは任意団体という建前を踏まえて、対応、改善を求めても現場はなかなか変わらない ③地域やOB、学校など保護者だけでは変えられない別の要素がある ④同調圧力が強く、そもそも声を上げることが難しいーなどです。

であれば、PTA問題を考えるイベントを開き、注目してもらおうと考えたんです。イベントについての記事を書けば、例えPTAの問題が改善されなくても、次の人にバトンを渡せる。集まってつながりあい、仲間を見つける。その様子を発信することで、イベントに出席できなかった人たちにも勇気を与えられるのではと思いました。

「PTAについて考え、発信する場を広げたい」と語る堀内京子さん

「PTAについて考え、発信する場を広げたい」と語る堀内京子さん

Q フォーラムは北海道、東京、朝日、毎日、中日、西日本、熊本日日の7紙の記者たち16人でつくる実行委が主催しました。なぜ全国の記者たちに参加を呼びかけたのでしょう。

PTAは、社会的な課題だと多くの人に知ってもらわないと問題は解決しないと思いました。検索してみると、全国の新聞でPTAに関する記事が書かれていました。同じことを取材しているけど連携できていない。記者たちが社の壁を越えて集まることで「これは全国各地の問題なんだ」と分かってもらえるのではと考えました。

もう一つは、PTAの持つ地域性、多様性が全国の記者たちが参加することで、より明確になると思ったんです。例えば東京では、上部団体への加盟率は3割を切っている。一方で100%近い加盟率の地域もある。そうなると、動員や同調圧力の強さや種類も全然変わってくる。その地域の空気感を知っている記者が参加することで、議論が熟したものになると思いました。

PTA問題には、活動そのものの課題もあれば、上部団体や地域との関係に関する課題もある。それぞれの記者が持つ得意分野を合わせれば、幅広いPTAの報道ができると考えました。

Q フォーラムは基調講演とグループ討論で構成されています。グループ討議を取り入れた狙いは。

PTAについての記事に対する読者からの熱い反応を見ていて、悩んでいる人たちはだれかに話したいのに、話す場がない人が多いのではと思いました。まずは自分たちの意見を安心して吐き出せる場が必要だと実行委で意見が一致しました。

参加費は2回とも2千円。決して安くないのに、大勢の人が参加してくれて驚きました。フォーラム後は、「頑張っている人たちに会えて元気をもらえた」「地元に戻って学校や教育委員会、議員と話してみた」といった報告が寄せられ、手応えを感じました。

Q 今後はどのような展開を考えていますか。

1年に何度もフォーラムを開くのは大変なので、オフ会やミニフォーラムみたいなものを開ければと思います。PTAについて考え、発言することは結局、政治や民主主義、私たちの社会のあり方について発言することと重なります。これをきっかけに、学校の変なルールや、教育の職場環境、部活のあり方などを取材している全国の記者たちや、問題意識を持つ市民たちと連携できれば面白いと思います。


<略歴>ほりうち・きょうこ 愛知県出身。1997年に朝日新聞入社、文化くらし報道部、特別報道部などを経て2015年4月から経済部。

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