• 幼保無償化どう変わる 10月スタート

    幼児教育・保育の無償化が10月にスタートし、3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は低所得世帯について保育所などの利用料が無料となる。消費増税分を財源にした少子化対策の一環だが、国の基準を満たさない施設でも当面、無償となるなど保育の質低下への不安も大きい。無償化の対象や手続きなど制度についてQ&Aで解説し、保育現場の声や課題についてもまとめた。

    3~5歳児原則無料/給食費、実費を負担

    Q なぜ10月から保育所や幼稚園などの利用が無料になるのですか。

    幼児教育にかかる経済的な負担を軽くして、子どもを育てやすい環境をつくり、少子化に歯止めをかけるためです。2017年の衆院選で安倍晋三首相が掲げ、今年5月に無償化実施のための改正子ども・子育て支援法が成立しました。国が負担することになる保育料などの約8千億円は、10月に消費税が10%に引き上げられることによる増税分を充てます。

    Q 通園している子どもの全員が、無料になるのですか。

    3~5歳児は原則として、幼稚園や保育所、認定こども園に通う全員が対象になります。ただし、幼稚園と認可外保育所に通っている3~5歳児は、国負担分に上限があります。幼稚園は月2万5700円、認可外保育所は月3万7千円で、上限を超えた分は保護者の負担です。

    Q 保育所に通う0~2歳児は。

    住民税非課税世帯は無料になります。課税世帯はこれまで通り、保育料の負担が必要です。

    保育園と幼稚園の年齢別利用割合

    Q 対象となる子どもの保護者は手続きが必要ですか。

    認可保育所と認定こども園、幼稚園の利用者は、基本的に手続きは不要です。認可外保育所の利用者は、市町村から新たに「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。また、幼稚園の利用者で、朝や夕方の「預かり保育」を利用する人も、保育の必要性の認定を受けると、1日450円を上限に、預かり保育料が無料になります。

    Q 保育には給食費などいろいろとお金がかかりますが、どこまでが無料になりますか。

    3~5歳児の給食費はこれまで、主食費(約3千円)は保護者が保育所に支払い、おかず代の副食費(約4500円)は保育料に含まれていました。10月の無償化後は、保護者が副食費を含む合計約7500円を保育所に支払うことになります。ただし、年収360万円未満の世帯は、副食費の支払いが免除されます。園の送迎バス代や行事費などは、無償化の対象外です。

    Q 無償化されると、保育所や幼稚園の利用者は増えますか。

    道内の保育所、幼稚園関係者によると、無償化で保育のニーズが大きく増えることはないとみられます。3~5歳児は、もともと9割以上が幼稚園や保育所に通っています。また、0~2歳児の住民税非課税世帯も「既に保護者が働いているケースが多い」(札幌市の担当者)という理由からです。

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    保育士不足は依然課題 雑費、保護者になお重く
    現場に期待と不安の声

    幼保無償化は、政府の思惑通り、少子化対策につながるのだろうか―。子育て中の保護者からは歓迎の一方、将来への不安の声も漏れる。

    来春から長女(2)が幼稚園に通う札幌市中央区の主婦(37)は「わが家にとってはちょうど良いタイミングで無償化になる。浮いたお金を子どもの習い事に使いたい」と喜ぶ。ただ、将来の教育費負担への不安があり「幼稚園の無償化だけでは、とても『(子どもを)もう1人』とは思えない」と表情を曇らせる。

    2歳の長男が幼稚園のプレ保育に通っている豊平区の主婦(26)も「無償化といっても園に支払う雑費はいろいろあるので思ったより楽にならない。正直、期待外れだ」と言う。

    3~5歳児の給食費の扱いを巡っては混乱が起き、国が保育士の人件費加算の拡充を見送る事態にもつながった。

    自治体や保育所は幼保無償化の説明会などで「保護者は10月から月約4500円の副食費(おかず代)を保育所に支払う」と伝えてきた。だが、内閣府は9月4日、「物価調整額を含めると、副食費は(1人当たりで)約5180円」とする通知を出した。

    通知では、保育所は国から副食費約5180円を引かれるが、保護者からは約4500円しか受け取れないことになる。保育所は「減収になる」と反発。結局、内閣府は9月18日に通知を撤回し、国が差額の1人当たり680円を負担することになった。

    給食を食べる保育園児たち
    給食を食べる保育園児たち=札幌市東区の光星はとポッポ保育園

    国は負担増を理由に、当初予定していた保育士の人件費に充てる加算の拡充について「財源が見込めなくなった」(内閣府子ども・子育て支援担当)として、直前に見送りを決めた。

    「10月から保育士を1人増やせるはずだったのに難しくなった」。札幌市内のある認可保育所の園長は今月18日、国の通知文書を手に肩を落とした。

    この保育所は加算対象で年約500万円の増収を見込んでいた。増収分で10月から保育士を増やし、0~2歳児を何人か受け入れる予定だった。直前に予定が狂ったことに、園長は「加算の見送りはこじつけだ」と残念がる。苫小牧市の認可保育所園長も「加算で、今年の運営は赤字を回避できると期待していた。国の制度設計がずさんすぎる」と憤る。

    希望する認可保育所に入れない子どもを示す潜在的待機児童数は、道内で2539人(4月時点)に上る。前年同時期より148人増、3年前に比べると、1242人増えている。

    北海道保育団体連絡会の柴野邦子事務局長は「無償化の方向性自体は良いと思うが、保育士不足で0~1歳児の受け入れを抑えている保育所も多い。根本的な保育士の処遇改善策が必要だ」と指摘している。

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    副食費負担する自治体も

    各自治体はこれまで、国が定める基準額より安い保育料を独自に設定し、保護者の保育料負担を軽減してきた。無償化後はその予算が浮くため、国は自治体に対し、浮いた予算を子育て支援策に活用するよう要請している。

    道内では北見市や三笠市、十勝管内の町村など一部の市町村が、保育所を利用する3~5歳児の副食費の免除や、0~2歳児の課税世帯の保育料軽減を10月から予定している。

    3~5歳児の副食費を免除する北見市は「副食費はもともと保育料に含まれ、保護者が所得に応じて負担してきたもの。歴史的な背景などを踏まえ、一律に実費徴収するのは避けるべきだと考えた」(保育課)とする。必要な予算は年間約2千万円で、幼保無償化で浮く額の範囲内に収まると言う。

    全国私立保育園連盟の菊地秀一副会長は「各市町村は国の要請通り、浮いた予算を3~5歳児の副食費や、0~2歳児の課税世帯の負担軽減など、子育て支援に活用してほしい」と要望している。

    取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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