女性の不正出血は病のサインかも 放置は禁物 検査で原因確かめて

生理の予定ではないのに突然出血して女性を驚かす不正出血。婦人科で訴える患者は多いが、原因は子宮がんなどの悪性疾患から、ホルモンバランスの乱れまで幅広い。「生理の日程が狂った?」などと放置せずに専門医を受診したい。

2年に1度検診を

不正出血が病のサインになるのが子宮体がんと子宮頸(けい)がんだ。

体がんは子宮内膜にできる悪性腫瘍で、初期段階から不正出血があるので気づきやすい。肥満や高血圧などの生活習慣病が関係するとされ、出産経験のない女性もリスクが高いといわれる。40代後半から60代に集中する。

子宮の出口(頸部)にできる頸がんは、性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因だ。20~30代の若い女性に増えているが、検診で、がんの前段階で起きる細胞の変化を見つけることができる。まどかレディースクリニック(札幌市中央区)の高橋円院長は「不正出血などの症状がなくても、20歳を過ぎたら2年に1度は子宮がん検診を受けてほしい」と話す。出血が起きる悪性腫瘍は卵巣がんや子宮肉腫、膣(ちつ)がんなどもある。

良性腫瘍の子宮筋腫のうち、子宮腔にできる「粘膜下筋腫」は、筋腫によって生じた子宮内膜の凹凸が月経に影響し、不正出血が起きやすい。さらに筋腫が膣へ飛び出す「筋腫分娩(ぶんべん)」になると、出血が増えることも。筋腫の多くは子宮鏡や腹腔(ふくくう)鏡で切除できる。

札幌白石産科婦人科病院(白石区)の明石祐史院長は「筋腫は大きさや場所によっては流産のリスクを高めることもある。妊娠を希望する女性には検診でチェックすることを勧めます」。 明石院長が「毎日患者が訪れる」というほど多いのが萎縮性膣炎だ。閉経後は女性ホルモンのエストロゲンが低下する影響で、膣の粘膜は萎縮、分泌物も減るので炎症を起こしやすくなり、出血や性交痛の原因になることもある。

広い年代で要注意

ホルモンバランスの乱れで起きる「無排卵性出血」は、思春期から更年期まで幅広い。

受精卵が着床する子宮内膜は、排卵の過程で分泌されるエストロゲンによって増殖する。卵巣機能を調節する脳の視床下部や下垂体がうまく機能しないと排卵しないため、エストロゲンが突然低下し、増殖できなくなった内膜がはがれて出血する。もしくはエストロゲンが分泌され続けても、子宮内膜を安定させるための黄体ホルモンが分泌されないため、増殖しすぎた内膜がはがれて出血する。

札医大の産婦人科講師・馬場剛医師は「月経と違い、規則性がまったくない」と指摘。突然の出血で下着を汚すこともあるのでやっかいだ。

無排卵の原因は体質的な排卵障害のほか、脳腫瘍や事故などによる脳の損傷、過激なダイエット、強いストレスなど。出血が続くと日常生活に影響するだけでなく、貧血になることがあるため、妊娠希望者には排卵誘発剤、希望しない患者にはホルモン剤を使って治療する。馬場医師は「不正出血の原因が無排卵性出血ではない場合もあり、放っておくとがんを含む悪性疾患を発見する機会を失う。原因がどこにあるか、検査を受けて見つけましょう」と呼びかけている。

取材・文/上田貴子(北海道新聞記者)

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