新出生前診断導入6年、道内1498人受検 18年度は234人

妊婦の血液から胎児のダウン症など染色体異常の可能性を調べる「新出生前診断(NIPT)」を、日本医学会が認定する道内の病院で受けた人は2018年度に234人になり、13年度の導入から6年間で計1498人に上ることが、検査を実施した病院への取材で分かった。NIPTを巡っては、学会が義務づける遺伝カウンセリングなしで検査する認定外のクリニックが問題となる中、道内でも少なくとも1施設が実施。その一方で道内の認定病院では産婦人科医不足を背景に検査の予約が取りにくい状況が続いている。

NIPTは現在、道内では13年度から北大病院と札医大病院が実施。18年度は前年度から21人増。毎年度計200人以上が検査を受けており、微減微増で推移している。6年間の受検者のうち、染色体異常の疑いがある「陽性」と判定されたのは計30人。さらに確定診断となる羊水検査などを受け、異常が確定した27人のうち約8割の22人が人工妊娠中絶を選んだ。5人は流産や死産で、陽性と判定されながら確定診断で異常がなかった「偽陽性」は2人だった。国の人口動態調査によると、道内の出生数は18年度に約3万2千人(概数)。

新出生前診断 道内の6年間の結果

NIPTは確定診断ではないが、採血のみで高い精度で染色体異常の可能性が分かる。胎児の異常を理由にした人工妊娠中絶の是非について議論を呼んできた。そのため、十分な遺伝カウンセリング体制などをNIPT実施施設の認定条件とする日本産科婦人科学会(日産婦)の指針に基づき、臨床研究として、日本医学会が認定した医療機関(全国92施設)で実施されている。18年9月までに全国で約6万5千人が受けた。

全国では16年後半から認定施設での実施件数が減少しており、相当数が認定外施設に流れていると推測されている。血液分析は検査会社が担うため、カウンセリングを除けば、医療機関では採血するだけ。指針に強制力はなく、認定を受けずに検査しても罰則はないため、16年ごろから東京都内を中心に参入する民間クリニックが増加。道内では今年4月に東京のクリニックの委託を受けた札幌市内の民間クリニックが認定を受けずに検査を始めた。

一方、産婦人科医不足などで2年前から道内の認定2病院の予約が取りにくい状況が続き、18年度は200件以上の予約を断った。札医大病院でNIPTを担当する真里谷奨医師は「全国同様に認定外に流れている妊婦は少なくない」とみている。

ただ、認定外で受けた妊婦のカウンセリング不足などが問題となっており、実際、認定外施設で検査を受けた妊婦が結果だけを伝えられ、混乱して道内の認定病院に駆け込む事態も起きている。

北大病院で担当する河口哲医師は「産む、産まないの選択は妊婦に重くのしかかる。だからこそ検査前後の遺伝カウンセリングは必須で、妊婦が孤立しないよう、道内全体で検査体制を検討することが急務」と話している。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

新出生前診断

妊娠10週以降の早い時期に、妊婦の血液に含まれるDNA断片を解析し、胎児の3種類(13、18、21番)の染色体異常の可能性を調べる検査。確定診断には羊水検査が必要。日本産科婦人科学会の指針では、原則35歳以上、過去に染色体異常の子を妊娠した妊婦など対象。健康保険の適用外で、費用は羊水検査を含め約21万円。一方、札幌市内も含め認定外施設は普段、妊婦を診察していない産婦人科以外の医療機関が多く、妊婦の年齢制限を設けず、全染色体の異常や性別などの検査を行うところもある。

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