キラキラネーム、気になる? 名付けに正解はあるの?

名前は、親から子どもへの最初の大切な贈り物。近年は、常識とは異なる漢字の読み方をしたり、従来にはない音の響きを持つ難読の名前も増え、「キラキラネーム」と呼ばれています。キラキラネームは「読みづらくて困る」「子どもが苦労しそう」などの声がある一方で、「名前に込められた親の思いに支えられてきた」と感じる人もいるようです。名付けに正解はあるのでしょうか。

名前の付け方、法的には自由
漢字や読みの確認に負担感

キラキラネームには、いくつかの類型があります。

▽漢字の読みの一部を省略する
「心愛(ここあ)」(「心(こころ)」を「ここ」、「愛(あい)」を「あ」と読ませる)
「美桜(みお)」(「桜(おう)」を「お」と読ませる)など。

▽置き字を使う
「蒼空(そら)」「結夢(ゆめ)」など(「蒼」「結」は読まず、全体のイメージを補強する)。

▽漢字のイメージで読ませる
「陽葵(ひなた)」「希星(きらら)」など。

▽外国語読みにする
「月(るな)」「皇帝(かいざー)」など。

このほか、人気ゲームのキャラクターに漢字を当てた「光宙(ぴかちゅう)」のように、実在は確認されていないものの、インターネット上で話題になっている名前もあります。

現代の親は、何を重視して名前を付けるのでしょうか。子ども服のミキハウス(大阪)が今年3月に発表した調査では、子どもの名前を決める際に意識したこととして「字画」や「音の響き」を挙げる人が多い一方、「キラキラネームを避ける」も3位に入りました。

長女(1)に「心遥(こはる)」と名付けた日高管内の男性公務員(31)は「まず『こはる』の読み方を決めて、画数の良い漢字を探した」と振り返ります。「心」の字を「こ」と読ませることには「読めない人がいるかもしれない」と不安も感じましたが、漢字のイメージから「心豊かに育ってくれそう」という思いで名付けたと言います。

逆に「キラキラネームは絶対に避けたかった」という人もいます。旭川市の主婦(26)は長男(8カ月)に「康介(こうすけ)」と名付けました。「子どもが将来、『キラキラネームだ』とばかにされたら困る。誰でも読める名前にしたかった」と話します。

名前の付け方は、基本的には自由。常用漢字と人名用漢字の計2999字と平仮名、片仮名の範囲であれば、どう組み合わせ、読ませても構いません。姓名鑑定士の大西象允(しょういん)さん(札幌)は「『太郎』と書いて『あきら』と呼ばせても法的には問題ない」と言います。ただ、過去には「悪魔」の名前が「親の命名権の乱用」として自治体に受理されないケースもあった。大西さんは「心地よい漢字を選んであげてほしい」と語ります。

キラキラネームの子どもは、学校などで苦労するのでしょうか。札幌の男性小学校教諭は「何度か名前を呼ぶうちに慣れるので、学校では特段困らない」と言います。ただ、書類に記入する時に、本人に漢字や読みを確認することがあるため「何度も確認されることを子どもが負担に感じる可能性もある。珍しい名前を付ける場合、親はどんな思いを込めたかをしっかり説明してあげると、本人も納得しやすいと思う」と話します。

キラキラネームが増えた背景には、2004年の人名用漢字の大幅増や、名付け辞典に掲載される名前の変化などが指摘されていますが、珍しい名前は昔もなかったわけではありません。明治の文豪・森鴎外の子どもは「於菟(おと)」(オットー)「不律(ふりつ)」(フリッツ)、「杏奴(あんぬ)」など外国風。孫の「樊須(はんす)」さんは北大名誉教授でした。

「孤芳(かずよし)」という名前を持つ小樽市の70代男性は「読みづらいので、子どものころは自分の名前が好きではなかった」と振り返ります。それでも、中国の古典を愛好する父親から「孤」には「孤高の存在」「気高い」などの意味があると聞かされてきました。「名前に込められた志の高さが私を支えてくれたと、今では思っています」

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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