小学校で「教科担任制」、授業の質向上に期待 専科教員は不足、旭川でも配置進まず

顕微鏡を使った理科の授業で、丁寧に子どもたちを指導する旭川市立神楽小の森脇教諭

小学校で教科ごとに専門の教員(専科教員)が教える「教科担任制」が本年度から本格的に導入されている。専科教員の配置により授業の質が上がり、子どもの学習意欲が高まるなど効果が期待される。旭川市内の小学校でも導入されているが、教科別で最も配置が進む理科でも市内全小学校の3割に満たない。専科教員になるには、中学または高校の教員免許が必要なため人材が不足し、思うように配置が進まない課題を抱えている。

「顕微鏡で詳しく見てみよう」。旭川市立神楽小6年の理科の授業。専科教員の森脇芳秀(よしひで)教諭(47)が児童に話しかけると、子どもたちは顕微鏡をのぞき、植物の茎や葉を観察した。

授業の狙いは、植物の根から吸った水が茎や葉までどのように流れていくのかを学ぶこと。このような実験は、肉眼での観察が多いというが、森脇教諭の授業では、児童により理解を深めてもらおうと、顕微鏡による観察を行っている。6年生の大野美結(みゆ)さんは「森脇先生は細かく説明してくれるし、顕微鏡を使うから、より分かりやすい」と満足そうに話す。

森脇教諭は中学、高校の両方の理科の教員免許を持っている。前任校ではクラス担任として全教科を教えていたが、昨年4月、神楽小で理科の専科教員になった。現在、3~6年の理科の授業を受け持つ。

道教委は専科教員の配置を急ぐが、中学、高校の教員免許を持つ小学校教諭は多くない。旭川市教委学務課によると、市内でも同様に専科教員が不足しているという。

市教委によると、本年度の専科教員は、教科別で理科が最も多い14校。続いて英語が11校。国語と体育が各1校、算数はゼロ。最多の理科でも、配置されているのは市内全小学校の3割に満たない。

全国的な教員不足は専科教員の配置が進まない要因にもなっている。道教委は今年、教員採用試験の会場を道外で増やすなどしており「一人でも多くの人に受験してもらえる環境づくりに努めたい」(教職員課)とする。

文部科学省は、専科教員の利点として、中学進学後に学習や生活の変化に対応できない「中1ギャップ」の対策になるとしている。担任が全教科を教える小学校の授業から、教科ごとに教諭が替わる中学校の授業に、子どもたちが対応しやすくなるため。担任と専科教員が児童に関わることで、児童の相談に応じやすくなる利点もあるという。

森脇教諭の授業を受けた神楽小6年の阿部航大(こうだい)君は「最初は教える先生が替わって慣れなかったけど、今は森脇先生に親しみを感じる」、島田すずさんは「中学校に進んだ時のイメージがわいた」と話す。

専科教員の利点について道教大旭川校の安藤秀俊教授(理科教育学)は「(小学校教諭は)大学で全科目を広く浅く学ぶため、大学で習っていないことを教える場合もある」と指摘。その上で「専科教員は、自分の教える科目に集中して授業の準備ができ、指導力が上がる」と期待する。

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