子宮頸がん「9価」ワクチンいつ無償化?

HPVワクチンの接種を受ける女性(にしかわウイメンズヘルスクリニック提供)

毎年、国内で1万人以上の女性が発症し、約3千人が亡くなる子宮頸(けい)がん。その原因となる「ヒトパピロマーウイルス(HPV)」の感染を防ぐため、政府が4月、HPVワクチンの定期接種の積極的勧奨を再開しました。ただ、より幅広い九つのウイルスの型に効く「9価ワクチン」を打つには、今も高額な自己負担が必要です。欧米では男性も対象に無償化され、患者も減少している9価ワクチン。接種が控えられていた日本では子宮頸がん患者が増え続けていますが、接種対象となる小学6年~高校1年の子を持つ親には、9価ワクチンの接種無償化を待つ人も多いのが実情です。公的な支援はいつになるのでしょうか。(報道センター 小森美香)

HPVワクチン

感染を防ぐため、一般的に初めての性交渉を持つ前に打つことが推奨されている。2013年4月に無料で受けられる定期接種となったが、接種後に全身の痛みやしびれなど、さまざまな症状を訴える人が相次いだため、厚生労働省は、個別に予診票を送り、接種を促す「積極的勧奨」を同年6月に中止した。しかし、2020年にスウェーデンの研究チームが、17歳より前に接種した人の子宮頸がん発症リスクが88%低下したとの研究結果を発表。安全性についても、国内外の研究で、全身の痛みなどの接種後の症状とワクチンの関連性を示す研究結果は確認されていないことなどから、厚労省の専門部会は「ワクチンの安全性に特段の懸念は認められない」と判断した。厚労省は今年4月に約9年ぶりに積極的勧奨を再開。勧奨中止の期間中に接種対象だった1997~2005年度生まれの女性は、本年度から3年間無料で接種できる。

10万円の自己負担

「効果が高い方がいいと、9価の自費接種を選びました」。札幌市手稲区の契約社員渡辺光代さん(50)は2年前、高校2年だった長女(18)に約10万円を支払って、9価ワクチンを打ちました。

日本で無償で行われているHPVワクチンの定期接種は、悪性度が高いがんになる可能性が高いウイルス16、18型に対応する「2価」、この二つに良性腫瘍の「尖圭(せんけい)コンジローマ」などの原因となる6、11型を加えた「4価」の2種しか、現段階では対象とされていません。

日本がHPVワクチンの接種についての積極的勧奨を2013年から約9年間中止していた影響もあります。渡辺さんは、積極的勧奨が控えられており、副反応などにも不安を感じていたことから、長女のワクチン接種をためらい、高校1年までという定期接種の時期を逃してしまいました。ですが、HPVワクチンについての情報を得るうち「接種しないより、接種するメリットの方が大きい」と判断して、打つことにしたと言います。

「9価」は、四つのウイルスのほか、日本人の感染例が多い52型や58型など五つのウイルスにも有効とされています。この52型や58型は、がんの手前の「異形成」や「上皮内がん」を引き起こすとされています。

渡辺さんは、打つのであれば、より効果の高い9価を打たせたいと考えました。2020年6月当時、国内では承認前だったことから、扱っている医療機関を探し、輸入の9価ワクチンを接種しました。長女も「あとで病気になるより、打つ決断をして良かった」と話してくれました。

ただ、経済的な負担は大きかったといいます。9価の接種費用は1回3万円前後で、3回の接種が必要でした。積極的勧奨の再開により、対象期間を逃し自費で接種した人には、自治体によっては費用が返還されますが、それは「2価」と「4価」の場合だけ。9価を打った場合は返還対象となりません。

渡辺さんは「子供が1人だから打てたが、年の近い姉妹がいたら負担が多く無理だった」と明かします。

札幌市中央区の薬剤師水野仁美さん(51)は、国内での使用実績が多いことなどを重視し、今年6月に長女(18)に「4価」を接種する決断をしました。看護師らから「9価」についての説明も受け、関心を持ったそうですが「やはり約10万円というのは負担が大きい。今後、無償化されるかもしれないが、娘の年齢を考え、早く打たせたいと4価にした」と話します。

9価ワクチンの「シルガード9」(MSD提供)

札幌市中央区の女性(47)は、中学校に通う13歳の長女に早く打たせたいと考えていましたが「できるなら9価ワクチンを打ちたいので、無償化されるまでもう少し様子をみるしかない。9価の無償化を待っている親は多い」と語ってくれました。

では、無償化される見通しは立っているのでしょうか。政府の議論を追ってみました。

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