お弁当 路線バスで“登園” 留萌のカフェ→羽幌の幼稚園 貨客混載 運賃は通常の半額

弁当をほおばる園児からは「全部おいしい」と喜ぶ声が聞かれた

【留萌、羽幌】留萌市内の飲食店「コミュニティースペース夢カフェ」は、今春から羽幌町内の羽幌藤幼稚園に、幼児用の特製弁当を提供している。町内の業者が休業し、同店に白羽の矢が立った。配達先まで約50キロと遠いが、羽幌に向かう路線バスに積むことで低額運送を実現した。弁当の提供は家庭の負担減や食育の面でも恩恵は大きく、感謝の声が挙がっている。

14日午前6時、JR留萌駅からほど近い夢カフェで、パートを含む4人がかりで弁当作りが始まった。弁当の大きさは年少児用の15センチ四方から、ひとまわり大きい年中、年長用、職員用まで計31個を約2時間で作り上げる。

夢カフェが作る幼稚園児向けのサンドイッチ弁当

この日のメニューはチョコやイチゴジャムを挟んだサンドイッチ、ミニトマト、タコ形ウインナーなど。出来上がった弁当は、近くのバス停から沿岸バス(羽幌)の幌延留萌線の車内に積まれ、約1時間半後に羽幌町のバスターミナルに降ろされる。昼ごろに幼稚園の職員が受け取り、園で待つ子どもたちに届けられる仕組みだ。

幼稚園では昨年夏に給食の日を導入し、週に1度、町内のパン店からサンドイッチなどの提供を受けていた。しかし、店主が急な病で4月以降の継続が困難になり、幼稚園では代わりの業者を探していた。人づてに留萌市でテイクアウト弁当を作る「夢カフェ」を知った。

路線バスに弁当を積み込んで、留萌から羽幌へ運送する

路線バスに弁当を積み込んで、留萌から羽幌へ運送する

「困っている幼稚園の力になれたら」と引き受けた店主の川崎正紀さん(49)は、弁当運送に沿岸バスの協力を仰いだ。同社は物品を路線バスに乗せて運送する「貨客混載事業」の利用を提案。運賃は1回につき通常の半額630円で、幼稚園側の負担も小さい。同社留萌営業所の藤井信由所長(65)は「こちらの手間はなく、お手伝いできることはやっていきたい」としている。

新たな給食は、保護者負担はほぼ変わらず、運送費は幼稚園が支払う。町内においても近年、共働き世帯が増えていることもあり、「弁当作りの負担が減る」と歓迎の声が挙がる。園に年少の息子がいる斉藤稚子教諭(30)は「みんなと同じものを食べることで、家では嫌う食材でも少しずつ慣れさせることができる。小学校給食の準備という意味も含め、教育的意義が大きい」と指摘した。

6月からは「おにぎりの日」も追加し、週2回の提供になる。店主の川崎さんは「自分も小さい子どもがいて、お母さんたちが弁当作りに費やす朝の10分の貴重さは身に染みてわかる」と話し、協力を続ける姿勢だ。熊木いづみ副園長(60)は「夏の高温や大雪によるバスの運休など課題はあると思うが、長く続けてもらえたら」と願っている。(吉川幸佑)

(2022年6月25日 北海道新聞朝刊掲載記事)

この記事に関連するタグ

Ranking

  • すべて
  • ニュース
2024
4/20
SAT

Area

北海道外

その他