園舎持たぬ「森のようちえん」 無償化対象外に疑問の声 「不平等な政策」

子どもたちを外で自由に遊ばせる「ぴっぱらの森」の野外保育。自主性を重視する保育方針に共感する保護者は少なくないが、園舎のない所は「幼保無償化」対象外となる見通しだ

政府が10月から実施予定の「幼児教育・保育の無償化」について、上川管内で自然体験の保育を行う「森のようちえん」関係者が国会の審議の行方を注視している。法案では、野外活動を重視し園舎を持たない「森のようちえん」が無償化の対象外となるためだ。無償化に備え負担覚悟で園舎建設に踏み切る所も出ており、運営者や保護者からは「本来は子育て世帯への支援なのに、施設の形態で区別するのはおかしい」と疑問の声が上がっている。

負担覚悟で施設建設する園も

森のようちえんは北欧で始まったとされ、国内では1990年代から広がった。自然の中で子どもを遊ばせながら育てるのが特徴。NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟(東京)が昨年3月に行った調査によると、恒常的に開設する「森のようちえん」は全国に97カ所あり、約4割が園舎を持たない。上川管内でも3カ所あるうち、2カ所は園舎がない。

道によると、園舎がない場合、幼稚園や認可保育所はもちろん「認可外保育施設にも該当しない」という。12日に参院本会議で審議入りした子ども・子育て支援法改正案は認可保育所などの利用料を無料とし、認可外保育施設も上限額を設けて補助する内容。「森のようちえん」の中には園舎を持つ認可保育所や認可外保育施設もあり、そうした施設は無償化の対象となる見込みだが、園舎がなく認可外施設にも当たらない所は「法案では対象外」(文部科学省)だ。

無償化の対象外となれば園児離れが予想され、関係者からは不安の声が上がる。鷹栖町で2010年から園舎を持たず野外保育を行う「NPO法人ぴっぱらの森」は無償化に備え、園舎を建設することにした。建設に1500万円かかり、うち300万円をクラウドファンディングで集める計画だが、残りは自己資金で賄わざるを得ない。松下理香子代表(57)は「法案からは、働く女性を増やしたい政府の思惑が透けて見える。子育て家庭への公平な支援とはいえない」と話す。

園舎を持たず保護者が交代で野外保育を実践する中富良野町の団体「森のたね」の寺岡祐子代表(48)は「経済的な理由で『森のようちえん』を選べなくなってしまう家庭が出てくる」と懸念する。

鷹栖町の東竜子さん(35)は子どもの自主性を重んじる理念に共感し、息子2人を管内の森のようちえんに通わせる。無償化対象外となっても月約4万円を負担し通園を続ける考えだが、「少子化時代にこんな不平等な政策がまかり通るのか」と疑問を呈する。政府は無償化の財源に、10月に引き上げ予定の消費税の増加分を充てる考えで、今国会での改正案成立を目指している。(久保田昌子)

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