コロナ禍3年 悩める親の孤立防げ 子育て支援 オンライン拡大

オンラインで子育ての相談を受けている音更町。タブレット端末を使い、一対一で対応している

オンラインで子育ての相談を受けている音更町。タブレット端末を使い、一対一で対応している

新型コロナウイルスの感染拡大から3年目。長引くコロナ禍で産前産後や子育てに関する支援にも、オンラインを活用する動きが広がっている。子育てについて相談相手が少なく孤立し、悩む親が多い中、十勝の自治体や医療関係者は「コロナに限らず、相談の選択肢を広げたい」とし、オンラインなど効果的な支援のあり方を模索している。


音更町保健センターの一室。同町健康推進課の保健師がタブレット端末を前に座った。画面越しに相談相手が映り会話が始まる。母子手帳アプリ「母子(ぼし)モ」のオンラインシステム機能を使った子育て相談だ。

「母子モ」はもともと、自治体から地域の育児や生活情報を受け取り、予防接種のスケジュールを確認できる民間会社が開発したアプリ。コロナ禍で出産や子育ての相談事業が縮小する中、全国的に相談機能の需要が高まり、オンライン相談のシステムを追加した。

システムを開発したコンテンツ配信会社のエムティーアイ(東京)によると、5月現在で道内の41市町村が母子モを導入。このうち音更町、士幌町、幕別町、更別村を含む道内9自治体でオンライン機能を取り入れている。

音更町はこれまで、新生児のいる家庭を保健師が直接訪問し、相談を受けている。コロナ禍以降も感染対策をしながら続けており、2020年11月に「相談方法の選択肢を増やそう」と母子モを使ったオンライン相談を開始した。これまでに6件の相談があり、赤ちゃんの沐浴(もくよく)や離乳食について相談を受けた。

町健康推進課によると、コロナ禍が長引く中、特にきょうだいのいる家庭での育児疲れの相談が増えているという。小学校の学級閉鎖などで上の子の面倒をみる時間が増え、赤ちゃんの世話も重なり疲弊してしまうという。

オンラインの相談は自宅からも気軽にできるという利点がある。同町では「コロナがこの先終息しても、外出が難しかったり苦手な人もいる」といい、今後もオンラインによる相談を続ける考えだ。ただ、現在はシステム上、複数人と同時にやりとりする講座はできない。参加者と交流しながら沐浴や離乳食、子どもの健康などを教えるオンライン講座について検討中だ。

医療機関も知恵を絞っている。帯広市内の産婦人科慶愛病院の産後ケアセンター「クローバー」は20年8月から、限定的にLINEによる育児相談を始めた。家族や親戚など頼れる相手がおらず、電話や対面でのコミュニケーションが難しいといった人を対象にしており、これまで約50人が利用。今後は有料にした上で対象者を限定せずに行う予定だ。

また、同病院と同センターでは、オンライン会議システムZoom(ズーム)を使った育児相談も行っており、離乳食や授乳、産前や産後の体、子どもの健康などについて、同病院を受診した人からの相談を受けている。

これまで、同センターでは、離乳食や産後ヨガなどさまざまな講座を開催。終了後は参加者がお茶や菓子を食べながら交流していた。こうした場で母親同士で知り合いをつくり、雑談したり育児の困りごとを共有したりできた。しかし、コロナ流行後は講座の人数を制限したり、終了後の茶話会を中止せざるを得なかった。さらに、帰省して出産したり、産後、家族に来てもらい援助を受けたりすることが難しくなった。

1歳未満の子どもを育てる夫婦のメンタルヘルス不調のリスク割合

国立成育医療研究センター(東京)が20年に発表した調査によると、1歳未満の子どものいる家庭のうち「メンタルヘルス不調のリスクがある」とされた割合は父親11%、母親10.8%だった。調査は16年のデータが基で、コロナ禍で地域や家族のつながりが薄くなっている中、さらに深刻化している可能性がある。

同病院で産後のケアを担当している助産師の沖元三恵さん(44)は「人とのつながりが薄まり、ネットで検索しすぎて余計不安になる親が多い」と指摘。「いろいろな窓口を増やしながら、丁寧に寄り添いたい」と話している。

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