佐呂間の閉校校舎、乳製品カフェに 子どもの遊具、集客に弾み

ソフトクリームやジェラートなどを販売し、イベントや遊具を楽しむ家族連れらの姿も目立つ「アルボカフェ」の店内

ソフトクリームやジェラートなどを販売し、イベントや遊具を楽しむ家族連れらの姿も目立つ「アルボカフェ」の店内

【佐呂間】昨年8月に旧若里小(若里498)の校舎内で開業した乳製品専門店「ARVO CAFE(アルボカフェ)」。希少なジャージー種の生乳を100%使用した濃厚な味わいのソフトクリームやジェラートが人気で、さらに閉校校舎を利用する特性を生かした子ども向けの遊具や、家族連れで利用しやすい仕掛けが集客に弾みをつけている。酪農が盛んな地域ならではの商品PRに加え、今後は町内外から多くの人々が集うコミュニティーの場としても注目を集めそうだ。

カフェは、校舎から北西に約5キロ離れた場所で乳牛約900頭を飼育する「中谷牧場」(湧別町計呂地)が運営する。2018年に佐呂間町から同校舎を無償で借り受け、総工費2億円以上をかけて一部改装し、校舎内に整備した工房で19年から商品開発に着手。ジャージー乳の中でも「A2ミルク」と呼ばれる消化不良を起こしにくい成分を持つ生乳のみを使用するのが最大の特徴で、ソフトクリームやジェラート、プリンなどの乳製品を完成させた後にカフェを開いた。

同牧場の中谷友則社長(68)は言う。「湧別の酪農はオホーツク管内でも最大規模でありながら、他の地域に自慢できる地場の乳製品がなかった。(町外に行く際の)手土産が海産物ばかりなのが悔しかった」

現在、農産物の生産と加工、販売を一貫して行う「6次産業化」が地域振興策の一つとして注目されている。中谷社長も独自の乳製品開発の方法を模索する中で、佐呂間町側から校舎利用について打診を受けた。同校は06年3月に少子化を背景に閉校したが、校舎自体は比較的新しく、耐震性にも問題はなかった。中谷社長は「将来的には工房とカフェのほかに、空き教室を使った体験学習などの多彩な展開ができる」として、校舎の維持管理の役目を引き受けたという。

カフェオープン直後の約2カ月間は新型コロナウイルス対策もあり、商品のテイクアウトのみの対応とした。11月から校舎内でも飲食できるように変更。同時に校舎中央のホールには学校らしさを感じさせる鉄棒や平均台、教室にも卓球台を用意し、商品を受け取るまでの待ち時間や、飲食後の休憩時に自由に利用できるようにした。ホールには中谷社長が自費で購入した子ども向けのバッテリーカーやミニバイクもあり、週末は多くの家族連れらがジェラートなどを片手に子どもを遊ばせる姿が目立つ。

また、最近は広いホールを活用してヨガ教室や雑貨販売などのイベントも開くなど、周辺地域の事業者と連携して地域活性化に貢献している。4月下旬に初めて来店した遠軽町の伊藤佳子さん(34)は「2歳と1歳の子どもたちが楽しそうに遊んでいてすごく良い場所だと思った。(遠軽など)この近辺にあまりない施設で気に入った」と喜ぶ。

工房とカフェの製造販売責任者の丸山洋平さん(32)は「今やっていることはまだ『種まき』の段階。地域の人たちとつながりながら、酪農業や乳製品についてもっと広めていきたい」と話す。校舎を提供する佐呂間町の武田温友町長は「斬新なアイデアでさらに町内外から人が集まる場所になってくれたらうれしい」と期待を込める。

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