厚沢部の「保育園留学」好評 移住体験の子ども一時預かり 70組キャンセル待ち

「はぜる」の園児たちと園庭で遊ぶ大崎結翔君(中央)

【厚沢部】町内で移住体験「ちょっと暮らし」をしながら認定こども園「はぜる」の一時預かり制度を利用する「保育園留学」が、首都圏などの親子に好評で、約70組のキャンセル待ちが出ているほどだ。町内の人口減少が進む中、町は子育て世帯を呼び込んで継続的に関わりを持ってもらう「関係人口」の拡大に手応えを得ており、元々「はぜる」に通う園児たちのコミュニケーション能力が向上するという思わぬ効果も現れている。


「ゆうとくん、一緒に遊ぼう」。3月末、「はぜる」の広々とした園庭で埼玉県上尾市の大崎結翔(ゆうと)君(5)は同園の園児たちから声をかけられ、元気に走り始めた。結翔君は父卓真さん(41)と母麻子さん(38)の3人家族で保育園留学を利用し、3月27日~4月3日に町内で暮らした。

田舎暮らし楽しむ

結翔君は平日に「はぜる」へ通い、園庭の遊具で思う存分遊び、ジャガイモからのフライドポテト作りを楽しんだ。IT企業に勤める大崎さん夫妻はその間、町内の「ちょっと暮らし」住宅でテレワーク勤務。休日は家族3人で町内のアスパラガスのハウスを見学するなど、田舎暮らしを満喫した。結翔君は登園の最終日、先生たちに「今日で帰るからね」とさびしそうに話した。

大崎さん夫妻は、観光の合間に仕事をこなす「ワーケーション」を月1回ほど活用して各地を旅行しているが、仕事中の結翔君の預け先がないことが悩みだった。麻子さんがフェイスブックでワーケーションについて検索し、厚沢部町の保育園留学を発見。「のびのびとした環境の『はぜる』に子どもを預けることができ、都会にはない豊かな自然も体験できる」と考え、申し込んだ。

保育園留学は町内の人口減少が続く中で立案された。町内の3月末現在の人口は3563人と、ピーク時(1960年)の3割程度まで減少。町の移住体験事業は2010年から延べ700人以上が利用したが、利用者の9割が60歳以上で、移住につながったケースはゼロだった。

町はそこで近年注目されている関係人口の増加を目指す方針に転換。移住まではしないが町と関わりを持つファンを増やし、観光や物販などを活性化させる考え方だ。町などはその柱として、昨年11月に保育園留学を事業化した。

これまでに約130件の申し込みがあり、首都圏からが8割を占める。キャンセル待ちの多さに対応するため、新たに中古住宅2戸を確保する予定だ。

園児に思わぬ効果

保育園留学では、町が想定していなかった効果も出ている。都会の子どもは運動が苦手な傾向があり、運動が得意な「はぜる」の園児がボルダリングの登り方のこつを自発的に教え始めた。園児が都会の子どもに「10階建ての建物なんてあるの?」と質問攻めにすることも。コミュニケーションの幅が広がっている。

同園の橋端(はしばた)純恵主任は「町内では同い年の友達は限られており、外から新しい友達が来ることが園児たちの刺激になる」とメリットを実感している。

町は保育園留学を推進させるため、7日に関係者による協議会を設立。利用者の消費動向のデータを分析することなどを確認した。協議会の担当者は「保育園留学で関係人口を増加させたい。訪れる回数を重ねるうちに、移住にもつなげられたらうれしい」と期待を膨らませる。(宮崎将吾)

(2022年4月18日 北海道新聞朝刊掲載記事)

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