• 産後うつ、父親も注意を

    写真はイメージ(プラナ / PIXTA)
    子どもが生まれた後、仕事と育児の両立に悩み、心のバランスを崩してしまう父親がいます。慣れない赤ちゃんとの生活で、眠れない、仕事が手につかない、落ち込んだりいらいらしたりする…などの症状が表れます。出産直後の女性が精神的に不安定になる「産後うつ」は、行政の対策が進んでいます。父親への支援の強化が求められています。

    仕事との両立悩み、不眠やいらいら

    「もうずっと眠れていない。つらい、きつい」と泣き出した夫を見て、札幌市の会社員女性(35)は異変に気付きました。2年前、長女が生まれて4カ月のころでした。

    コロナ下で双方の実家の両親を頼れず、自治体の産後ケアも感染の不安から利用しませんでした。出産のダメージで思うように動けなかった女性に代わり、夫が仕事から定時で帰った後、娘にミルクを与え、沐浴(もくよく)させ、洗濯、掃除―と働きました。次第に突然怒鳴り、ぼーっとするようになりました。

    夫はもともと不眠症気味でしたが、妊娠前は夫婦で外食など息抜きする時間がありました。「環境の変化に、体がついていかなかったのが原因なのかな。夫はパパ友もいないし、悩みを相談できる相手もいなかった」と女性は振り返ります。

    手稲渓仁会病院(札幌)の精神保健科では、子どもが生まれた後、うつ症状に悩む男性が年に10~20人受診します。その多くは産婦人科を通して紹介された患者です。部長の白坂知彦さん(45)は「ここ4、5年で増えてきている。父親も子育てへの参加が求められる時代になったことが、関係しているのでは」と話します。

    最近では、夜勤の仕事の激務と育児ストレスが重なり、いらいらを抑えられない30代男性が受診しました。白坂さんは「症状が重くなる前に早めにSOSを出すことが大切」と強調します。 

    産後、男性が注意するべき心の不調、産後の心の不調を防ぐポイント

    母親より支援不足、長時間労働課題

    国立成育医療研究センター(東京)は、厚生労働省が2016年に実施した国民生活基礎調査のデータを分析しました。子どもが生まれて1年の間に、精神的な不調を感じているとみられる父親の割合は11%で、母親と同水準でした。週に55時間以上働いている人はリスクが高まることも分かりました。

    生後1歳未満の子を育てる夫婦が「メンタルヘルスの不調のリスクあり」と判定された割合(2016年)

    同センター政策科学研究部の竹原健二さん(41)は「残業時間が過労死ラインに達していなくても、帰宅後に育児家事と働き続ければ体には負担がかかる」と指摘します。産後の父親の心の不調を防ぐには、職場での長時間労働の削減が必要だとみています。

    また、現在の産前産後の支援は母子が主な対象です。竹原さんが関わった21年の調査によると、父親を主な対象とする育児支援を実施した自治体は6.5%にとどまりました。母親には乳児健診で産後うつのスクリーニングも行われるが、父親にはありません。竹原さんは「産業医が子どもが生まれる男性社員と面談するなど、企業側が果たせる役割もある」と話します。

    新米パパへアドバイスは 
    うまくやろうと力まず 職場の同僚に相談して

    子育てを無理せず楽しむためにはどうすればよいのでしょうか。父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)の北海道共同代表、伊藤新さん(53)に新米パパが持つべき心構えを聞きました。

    伊藤新さん

    子育ては思い通りにならない、と覚悟してください。なぜ泣いているのかわからなかったり、抱っこで寝かしつけたのに布団に置いたらまたぐずったり。これまでの経験も知識も通用しない世界です。仕事と同様に「うまくやろう」とする父親は多いのですが、力んでもしょうがないです。

    育児に行き詰まったら、子育て支援センターなど頼れる場所はたくさんあります。母親ばかりでハードルが高いなら、子育て経験のある同僚に話してもいいです。「実は子どもの夜泣きで眠れなくて」と伝えることで、職場の理解も得られ、何かとフォローしてもらいやすくなります。

    子どもが生まれる前から、夫婦でこれからの家事と育児の分担について、しっかり話し合うことが大切です。世間の常識にとらわれず、お互いのちょうど良いバランスを探りましょう。家事の効率化についても、関連書を読んでノウハウを知ることを勧めます。

    取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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