初経の準備 新学年をきっかけに

新学年が始まる時期は、身体測定などで体の変化を実感する機会が増え、女の子は初めての月経(初経)に向けた準備を始めるきっかけになります。不安にならないためには、あらかじめ親子で話し合ったり、生理用品の使い方の知識を身につけたりしておくことが必要と、関係者は声をそろえます。学年や年齢だけで判断せず、体の変化を見逃さないことも重要です。

親子の話し合いは前もって

初経を迎える平均年齢は12歳前後。胸が膨らみ、陰毛が生え、1年に8cmほど身長が伸びたころに来ることが多いとされています。北海道教育委員会によると、道内の公立小学校では4年生から初経について授業で取り上げています。

札幌市厚別区のパート従業員女性(36)の長女(12)は小4の時、学校で習った直後に初経が来ました。授業で習う前に来た子もいたと言い、女性は「もっと早い方が子どもも心の準備ができた。急に出血し、病気で死ぬのではと不安になったようだ」と振り返ります。

学年にかかわらず、胸の膨らみなど体に変化が見られたら、月経の仕組みやナプキンの使い方を子どもに伝える目安です。生理用品などを販売するユニ・チャーム(東京)デジタルマーケティング担当の長沢亜紀子さん(45)は「あらかじめ親子で話し合っておくことで、初経が来たり不安があったりしても言いやすくなる」と話します。

初経に向けた保護者の心構え

生理用品の使い方を学んで

同社は昨年4月、月経周期などを管理するスマートフォン用アプリ「ソフィガール」に初経の予測機能を追加しました。身長や体重の変化を入力すると、3カ月以内に初経が来る確率などが表示されるようにし、月経の基礎知識やナプキンの使い方も紹介しています。

初経の経血は黒や茶色、ピンクのような色など個人差があります。量は少なめで、小さめのナプキンを持ち歩くか、持っていなくてもティッシュを重ねて対応できる場合が多いです。その後は月経が毎月来る子も、2~3カ月おきの子もいます。

ナプキンは素材や厚さ、サイズもさまざまなので、自分の肌や状況に合ったものを使いましょう。ナプキンを抵抗なく衛生的に持ち歩くには、子どもが好きなポーチを用意するのがお勧めです。ナプキンをトイレに持って行ったり、交換時の音が気になったりする場合、ポケット付きのハンカチや専用ショーツにナプキンを入れたり、取り出す際の音がしづらい商品を選んだりする方法があります。

初経に備えたホームページを運営する大王製紙(東京)H&PC部門フェミニンケア・マーケティング部の海堀真由さんは「月経は長く付き合うものだからこそ、煩わしさを減らす方法を知ってほしい」と話します。

学校で初経が来た時、ナプキンを準備していなくても「大体の保健室には予備がある」と、養護教諭の経験がある道教委健康・体育課の高田真弓さん(50)は説明します。「保護者も含め、不安や心配があれば学校に相談を」と呼び掛けています。

痛みがひどい場合は病院へ 産婦人科医・寺本さん

月経に伴う若年層に多い症状や、受診が必要な場合について、NTT東日本札幌病院(札幌)産婦人科部長の寺本瑞絵さん(47)に聞きました。

寺本瑞絵さん

寺本瑞絵さん

月経前はホルモンの変化に伴い、眠くなったりイライラしたり、胸やおなかが張ったりします。初経を迎えるくらいの年齢になったら「定期的にこういう症状が出ることもある」と伝えていれば、心の準備ができるでしょう。

小中高生は経血を排出する通り道が狭く、経血を出そうとして子宮が収縮し、腹痛が起きやすくなります。子どもがつらそうにしていないか気にかけ、痛みがある時は鎮痛剤を服用したり、入浴でおなかや腰を温めたりすると軽減できます。

痛みがひどくて吐いたり、横になって動けなくなったりする場合は、婦人科に相談してください。15歳になっても初経が見られない場合や、多い日用のナプキンが1時間も持たないほど経血の量が多い時も、受診をお勧めします。

スポーツ庁によると、中高生の8割が生理痛で勉強や運動に影響が出ているとされています。不調を我慢しすぎると、学校を休まざるを得なくなったり、成績が落ちたりするだけでなく、子宮内膜症や不妊症につながることもあります。小児科と同じように、何かあれば相談できる婦人科のかかりつけ医を見つけてほしいと思います。

こんな時は婦人科へ

「生理の貧困」問題 道内の子どもたちにも
自治体配布、検討わずか4%

経済的な理由や家庭の事情で生理用品が手に入らない「生理の貧困」は、子どもたちの間でも問題になっています。内閣府の調査によると、昨年7月時点で生理用品の配布などをしたり、検討したりしている道内自治体は札幌、函館など8市町、わずか4%にとどまります。都道府県別では鹿児島県に次いで低い順位でした。

函館市の一般社団法人「JOY(ジョイ)」代表理事の佐々木絵美さん(37)は昨年3月から、個人で生理用品を配る活動を始めました。約1年で函館や旭川、北見、小樽などの小中高生や養護教諭から寄せられた相談は100件以上。家庭でナプキンが用意できない子どもは、学校の保健室や友達にもらっていたと言います。

民間による配布は広がっていますが、子どもには情報が届きにくいのが現状です。自治体などの配布も、子どもは学校があるため受け取るハードルは高くなっています。

小中学校の女子トイレにも生理用品を置いている佐々木さんは「生理の貧困で一番困っているのは子ども。自治体が学校に生理用品を置くことが必要」と指摘しています。

取材・文/尾張めぐみ(北海道新聞記者)

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