5〜11歳新型コロナワクチン接種、どう向き合う? 札幌市医師会・多米副会長に聞く

小児用ワクチン接種への向き合い方について話す札幌市医師会の多米淳副会長

5〜11歳対象の新型コロナウイルスのワクチン接種が3月3日、道内でも始まった。札幌市内では4日スタートするなど、石狩管内でも順次、接種が始まる。感染や重症化を防ぐ効果に期待がある一方、接種に慎重な保護者もいる。小児科医で札幌市医師会の多米淳副会長(61)に、子どもの接種をどう考えればいいか聞いた。

「接種 正しい情報を基に」
「したくない人 非難せず」

――小児用ワクチンは予防接種法の努力義務の適用外となりました。

「現状では、オミクロン株に対する接種効果のエビデンスはありません。海外のデータでは、デルタ株までは、5〜11歳の発症予防効果が示されています。新型コロナへの感染が引き金となって基礎疾患が悪化し、亡くなる人もいます。日本小児科学会では、重いぜんそくなどの基礎疾患がある子ども、医療的ケア児らへの接種は進めようということになっています」

――基礎疾患がない場合の接種をどう考えますか。
「メリットとしては、発症しても症状は軽症化するということ。オミクロン株では、ほとんどの子どもが感染しても軽症ですみますが、感染者数が増えれば、入院が必要になる中等症、重症になる子どもが出る可能性はあります。現状では、子供向けの治療薬は限られています。デメリットは副反応です。だるかったり、接種部位が腫れたりするなどのほか、まれですが、心筋炎もあります」

――注意すべきことは。
「最も避けてほしいのは、保護者の意思だけで接種するかどうかを決めること。本人への丁寧な説明と合意が必要です。厚生労働省のホームページにはQ&Aがありますし、小児科学会のホームページなど、学問的に正しい情報を参考に判断してほしい。ただ、保護者から『10年後、20年後どうなりますか』と聞かれますが『今は分からない』としか答えられません。不安感をゼロにはできません」

――判断に悩みそうです。
「小児科医の間でも議論はあります。希望者には丁寧に説明して合意を得て接種する。悩んでいる人の疑問に答えて、不安を少しでも解消する。何らかの理由で接種したくない人を非難しない。こうした考え方が大切です。接種するかどうかの判断は異なっても、子どもの健康が第一という思いは保護者に共通します。それをベースに尊重し合えば、差別や分断は避けられるのではないでしょうか」


<経歴>札幌市出身。杏林大医学部卒。札幌愛育病院小児科部長を経て、2001年に「円山ため小児科」(中央区)を開院。21年6月に札幌市医師会副会長。

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